劇場公開日 2021年10月29日

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「アンドロイドは「幸せ」を夢見るか」アイの歌声を聴かせて つみや=みつきさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0アンドロイドは「幸せ」を夢見るか

2022年3月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

笑える

幸せ

大傑作。個人的オールタイムベストのひとつになった。

転校してきた美少女ロボットのシオンが、クラスで孤立するサトミを「幸せ」にするため、いきなり歌ったりドタバタを起こす――というのがあらすじ。
ジャンルは「青春SFミュージカル」とでもいうべきか。特にSF的設定とミュージカルのお約束を上手く利用していて、「その手があったか!」という意外性がある。青春ものとしても、キャラクターの高校生らしい素直さと不器用さ、青春の恥ずかしさを逃げずに描いていて素晴らしい。

特筆すべきは、全体を貫くポジティブなAI観。テクノロジーの危険性を自覚しつつ、あえて肯定的に描くところに、監督の「願い」のようなものを感じる。現実がどうなるかはわからない、でもそうなったらいいなあ、と思いたくなる未来を描いている。ここをご都合主義的に感じて白ける人もいるだろう。自分は素敵だなと思う。

無駄のない脚本もお見事。過不足のない情報提示の仕方はほとんど芸術的ですらある。終盤で伏線を回収するシーンの感動は衝撃的で、理解してから観る二回目以降がまた楽しい。「二回目からが本番」はガチ。

キーワードは「幸せ」。劇中歌の歌詞にもある「あなたはいま幸せかな?」という問いは、幸福感が薄いとされる現代日本人に、とりわけ刺さるかもしれない。自分にとっては、オンリーワンの特別な作品になった。

つみや=みつき