「音と光による恐怖は良いものの」ウォール 絶体絶命 つとみさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0 音と光による恐怖は良いものの

2025年12月1日
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鑑賞方法:DVD/BD

2006年のレバノン侵攻を題材にしたスリラー?かな。
レバノンに拠点を置いていたヒズボラとイスラエルの軍事衝突。レバノンにしてみれば人の庭で何しとんねん!なわけで、この中で虐げられる一般市民をミニマムに描いた真面目な作品。

題材が題材なだけに、もっと社会的メッセージや製作者の主張なんかが色濃く出るかと期待したのだが、もちろん多少はあるもののかなり薄味であったと思う。
レバノン侵攻でこんなことがありました、こんな目に合いました、悲劇的ですと訴えるだけで、少なくとも私にはそれ以上のものは汲み取れなかった。
一応、最後にネタバレありで少しだけ書くつもり。

期待したメッセージ性は薄かったものの、ほとんど音と光だけで恐怖を演出するスリラーとしての面は良かったと思う。
イスラエル兵の姿が見えないことで、より恐ろしさを増幅させる。ホラーなんかもそうだが、相手が得体のしれない存在であればあるほど恐ろしいし、それが自分のすぐ側にあればなお恐ろしい。
音だけの爆撃、音だけの銃撃、それが家のすぐ前で起きている恐怖。

しかしそれだけでは94分という短さでも保たせるのはキツかった。
もともと悲劇的なレバノン侵攻を描くことしか考えていないのかもしれないが、映画として楽しむために、エンターテイメント的なスリリングさがもう少しあればと思う。

ここからネタバレ。

主人公は父を失い、妻は帰らぬ主人公を諦め一人国外へ脱出したようだ。
これにより孤独になってしまった主人公は瓦礫の山、廃墟になってしまった街に一人で彷徨うエンディング。
原題から察するに、こんなものが勝利と呼べるのか?ただ踏みにじられただけだろ?と言っていると思う。
なかなか皮肉が効いてるとは思うものの、結局、先に書いた、こんなことがありました、こんな目に合いました以上のことは特になかった。

つとみ
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