「人事とは思わず、より自己防衛の意識を」わたしは金正男を殺してない KZKさんの映画レビュー(感想・評価)
人事とは思わず、より自己防衛の意識を
非常に見応えのある作品だった。
この事件は日本でも多く報道されていた為知っている人は数多いと思われる。
しかしながらこの事件の詳細について詳しく知っている人は少ないのではないか。
この作品で事件の全てを理解できるとは言い難いが、それでも事件の詳細、細部、そして核心に触れる事はでき改めて北朝鮮の脅威を感じさせられる。
北朝鮮の工作員の罠に嵌り犯人に仕立て上げられたシティとドアンの2人の若い女性。
彼女らは長い年月を経て無罪を勝ち取ったわけだから今更彼女達が事件を事前に知っていたかどうかについてあれこれ是非を問うつもりはないが、少なくともこの作品を見る限り、あらゆる証拠証言からみても事前に犯行を知っていて動いていたとは思えない。
もちろんそういった事実を伝える為の作品でもある為疑いたくなるようなシーンはない。
ただ彼女らが全く問題ない行動を送っていたのか…それは違うようにも感じた。知らなかったとはいえ少なくとも金氏を殺害してしまったのは彼女達の行動が原因ではある。
見知らぬ人物を安易に信じ、目先のまとまったお金に目が眩んだ事が嵌められた原因の一つである事は事実だろう。
もちろんどんな理由があろうと人を陥れて、犯人に仕立て上げられる事は許される事ではない。
ただこの作品を観て一番感じたのは、この事件の関係者の良し悪しよりも自己防衛の大切さである。
SNSの発展により、色んな人々と関わる事が安易な時代になった。もちろんそれらがポジティブな結果をもたらす事の方が多いとは思うが、時としてネガティブな出来事に繋がる事もあるだろう。
便利なツールをネガティブな事を想定し、また否定する事で使わない事はもったいない。積極的に利用していくべきではあると思うがだからこそ同時に自己防衛の意識を高めていく事はこれからの時代ますます必要になっていく事であろう。
もちろんこの事件のように世界的な事件に巻き込まれる事は早々ないと思うが、物事を安易に受け止め関わる事が自分をネガティブな気持ちにさせ、それが自分をそして家族や周囲を傷つけてしまう誘惑はいくらでもある。
それらに敏感に、そして正しい判断を下し避けられるようにするには自己防衛意識こそが何より大切だとこの作品を観て更に痛感した。
結果として金氏の死は犯人を起訴することなく、国際政治に巻き込まれて闇に葬る形で幕は閉じた。
金氏にとっては報われない結果となったが、彼の死を無駄にしないためにもこの作品を通じて、各々がポジティブな考えを持ち、そして行動に繋がれるといい気がする。