「恋愛下手が面倒くさいのに引っかかると大変なのよね」アンモナイトの目覚め よしえさんの映画レビュー(感想・評価)
恋愛下手が面倒くさいのに引っかかると大変なのよね
古生物学の先駆者メアリー・アニングを題材に同性愛モチーフの映画を作るとか、一体どういう発想やねん。。
恋愛下手が面倒くさいのに引っかかるって、それこそ古今東西あるあるなんだけど、男女関係ないのねえ。しかしそのまま溺れてしまうには、彼女は聡明すぎたのかもしれぬ。自らの仕事に誇りを持つ女性だからこそというのもある。
それはそれとして。
わざわざメアリー・アニングを材に採った以上、監督はただ同性愛を描きたかっただけのはずがない。
実際、化石発掘者として今日得ている名声とは裏腹に、名だけは僅かながら得られても困窮した生活を送っているメアリーの姿は描かれているので、少なくとも伝記映画としての役目は果たしている。
そこには、今、高名な女性古生物学者と聞いてわたし達が想像するような優雅さや颯爽とした感じは微塵もない。ただ明日の糧にも困るような、生活に喘ぐ母親とメアリーの姿が赤裸々に描かれている。
19世紀は階級差別と女性差別が公然と行われていた時代だ。古生物学の基礎を作ったと言っても過言でないメアリー・アニングもまた、そのような過酷な時代に、本来であれば富と名声が得られるはずの貴重な発見を次々と行ったにもかかわらず、正当な評価を受けられないジレンマを抱えていたはずだ。それでも、彼女がその仕事に誇りを持ち、情熱を注ぎ続けたのだ。
そして史実として、メアリー・アニングとシャーロット・マーチソンが親しい間柄であり、一時期一緒に暮らしていたのはどうやら事実のようだ。
もちろん二人が同性愛の関係にあったかは今となっては分かろうはずもない。しかしながら、メアリー・アニングの生涯を描く映画を作成するにあたり、恐らくは生活苦と本来の栄誉を得られないジレンマの中で数少ない彼女の幸福な期間として、制作陣がこのエピソードを採ったのは、二人の関係性にスポットを当てたかったのだろう。
その上で、後の評価として、女性の時代を切り開いた先駆者としてのメアリーを表現するにあたり、同性愛という要素を加えることが、監督にとっては極めて自然であるべき姿だった、ということなのだろう。それが描き方として正しかったかどうかはさておき。
なお、同性愛を描く映画と知って、百合的な情感溢れる描写を期待して劇場に足を運んだ人がいたとしたら、幻影を打ち砕くような直截的なあられもない性愛描写に愕然としたかもしれない。そちらはそちらで極めて濃厚かつ明け透けでございました。
この映画、夢にまで見てかなり消耗しました。映画が夢に出て来るのは多分初めてではない。でも、今回は疲弊するほどの夢でした。って大袈裟かな?でも夢にご登場は本当です。