「女囚系映画と洋画劇場」ロサンゼルス女子刑務所 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)
女囚系映画と洋画劇場
昔は(今もあるのかもしれないが)21時からはじまる洋画劇場があり映画館へ行って映画を見るのが稀な者にとって映画といえばそれらのことだった。
そして映画評論家といえばそこに解説者として出てくる淀川長治や水野晴郎のことだった。
たいてい誰もがそのモノマネができ、わたしはもっと高度な荻昌弘のモノマネもできた。愛すべきキャラクターではあったにせよ当たり障りのないことしか言わない淀川さんや水野さんにくらべると荻さんは好奇心をそそる主知的な解説をした。
その頃洋画劇場でえっちなやつが放映されると翌日学校でそれについて男子たちで話し合うという一連の流れがあった。
若い時分は青い体験系やプライベートレッスン系でもさえも刺激的だったがそれらよりも中二なわたしたちを昂奮させたのは女囚系だった。
確か荻昌弘の曜日の「劇場」でわたしはリンダブレアが出てくるチェーンヒートを見た。原題もChained Heat(1983)。
エクソシストのブレアは、マコーレーカルキンとかハーレイジョエルオスメントのように、印象的な子役時代を覆すことができず大人の役者として定着しないタイプの女優で、成人すると迷走しながら官能路線へ奔っていた。ご記憶されている方もおられるだろうがあの頃「エクソシストの子役が脱いだ」というような見出しの記事がよく舞った。
むろん今見たらどうってことないだろうがチェーンヒートは当時の放送コード的には冒険だった。荻昌弘が「先週放映したチェーンヒートではたいへん大きな反響をいただきました」というようなことを言ったのをおぼろげながら、しかし確実に記憶している。
つまりチェーンヒートは当時テレビで放映するには過激すぎる内容だった。
検索したらシビルダニングやステラスティーブンスやヘンリーシルバなんて人まで出ていて、ちゃんとしたプロダクトでimdbも5.0と健闘していた。
その後レンタルビデオの時代にいろいろな女囚もの、イルザみたいなくだらないナチスプロイテーションさえも喜んで見たが、あの日荻昌弘の解説付で見たチェーンヒートよりも刺激的な女囚ものはなかったと思う。覚えていないにしても原体験とはそういうものではなかろうか。
現在2024年といえども、映画の装丁(パッケージ、ネットならサムネ)に使われる「牢屋と女」は男子をひきつけるもっとも効果的なセットだと思う。
もちろん男子だって学習し、だんだん釣られなくなるものだがネットフリックスで見つけたこのロサンゼルス女子刑務所のサムネに釣られた。2014年のテレビ映画、原題Jailbait、imdb4.3。
主人公のSara Malakul Laneはキャラメルなブロンドと黒眉のネイティブ風な顔立ちとあだっぽい曲線をもち全身そばかすで魅力があった。
義父にやられそうになったから正当防衛しただけなのに死なしてしまい牢に入れられ、そこからは卑劣な施設長と派閥争いとレズビアンと暴行と、女囚ものの定番がひととおり展開する。
女囚ものと言えば酷い目に遭うのは解るがバイオレンス値を高くすると色気が減退する。ロジャーコーマンはその加減がわかっていたから帝国を築いたのであって、本作は主人公を酷い目に遭わせすぎ。せっかくのSara Malakul Laneが台無しだった。
こういった暴力を主題にしたものは主人公をいちじるしいやられっぱなし状態に落とし込んで「逆襲の布石」を溜めていくのが定石で、溜め込んでおいた布石をラストで敵をやっつけて解放し爽快さへつなげるという方法論なのは解る。が、やられっぱなし状態が過剰だとラストに至る前に辟易してしまうという話である。
Sara Malakul Laneはネイティブ風だと思って見ていたが検索したらタイ系アメリカ人とのこと。出演歴にはC級が居並び、エリックロバーツと共演経験があり、ピーターストーメアとも共演経験があり、スティーヴンセガールの娘役を演じたことがあるという筋金入りのC級女優だがインスタをのぞいたら子だくさんのセレブライフで幸福そのものだった。