「二人の名女優なくして本作は生まれ得なかった」秘密への招待状 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
二人の名女優なくして本作は生まれ得なかった
この映画の内容を全く知らぬまま見始めた私は、謎が謎を呼ぶ語り口にすっかり引き込まれてしまった。幾度か登場する上空からゆっくり舞い降りるカメラワークは、ヒロインが瞑想にふける際の精神状態とも通底しているのだろう。そして物語もまた、自分の意識や感覚だけでは到底及びつかない場所から、運命がふわりと舞い降りてくる。そうやって結婚式のくだりになって私はこの映画が北欧の名作のリメイクであることにハッと気づくわけだが(遅すぎる)、そこで芽生えた思いは主に二つ。一つはやはり女優陣の巧さに尽きる。それぞれの思惑、経験、人生哲学を芯に秘めた両輪となる女性たちを、二人の女優があまりに見事に生き切った。が、一方で気になるのは、国際援助や国際支援といった要素がややバックグラウンドに留まっていること。彼らをそこへ向かわせる情熱や理由をもう少し描いてくれれば、物語の厚みや個々のキャラクターへの理解が増したと思うのだが。
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