「ノイズとイビキのどちらがマシですか?」カオス・ウォーキング Uさんさんの映画レビュー(感想・評価)
ノイズとイビキのどちらがマシですか?
原作は全く未読です。
ニューワールド
無機質な「ニューワールド」のネーミングは良いと思いました。そう言えば、何年か前に封切られた「フューチャーワールド」も殺りくのディストピアが舞台。精神が荒廃した世界には、時にこんな明るい名前が似合うようです。
この作品の舞台も、男ばかりの自給自足系のディストピアで、首長が率いる閉鎖的な世界。更に「そこは心の声が、視える世界」と言ううっとうしく、異常な設定。
煙草のようなノイズ
紫煙が立ち上るノイズの画像表現は、ザワザワしてて面白かったと思いますが、だから何なんだ感は、遂に取り払えなかった。
それは、ここに至る前段階の話が昔語りでしかなく、女性が滅んでいった時の経緯や衝撃的なシーンが登場しなかったからだと思います。いや、それ以前の男性が心の声を漏らすようになった時の呆れた状況も見たかった。
男たちが振り撒くノイズが原因で、女性が発狂死や自死したようなストーリーでしたが、中には、女性を逆に不気味に感じた男に殺されたと言う、酷いケースもあった?
ここは無限に広がる選択肢ではなく、多少とも明瞭な筋道を示して欲しかった。
行き場も見いだせない
ニューワールドは、過去を知る手がかりもなくて、これからも五里霧中。トッドは文字が読めないし、人口はどんどん減っていくだろうし、首長のプレンティスはヴァイオラを一体どうしたかったのか?
男女共生の集落も登場しましたから、再び女性と共存したうえで、普通の社会を構成していく腹づもりだったのでしょうか。それはそれで、長い作品ならば、面白かったかも知れないですが。
ここじゃないどこかを目指そう
いつしか作品は、トッドとヴァイオラが必死で走る逃走劇に変わっていった。二人が故障した巨大な宇宙船をさ迷い歩く姿は、そこだけ切り取った別の作品のようで、今更ながらにドキドキと爽やかでした。こうやって星の小さな物語が、いつか壮大なスペースオペラに連なっていく訳ですね。
大蛇の行く末
それからトッドが口から大蛇を吐いたシーンが冒頭にありましたが、それっきりでした。第2作があるとすれば、あの幻想が闘いの主武器になるのでしょうか?