「難易度の高い状況設定をわかりやすく描写」カオス・ウォーキング 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
難易度の高い状況設定をわかりやすく描写
ダグ・リーマン監督といえば、そこらのフィルムメーカーが映像化に二の足を踏むような難易度の高いストーリー設定を、もっとも簡潔かつ分かりやすいビジュアルで具現化する特殊な能力の持ち主だ。その意味でも本作の「考えたこと、感じたことが周囲の人にダダ漏れになる」という風変わりなSF仕掛けは、もはや彼のために存在するようなもの。言葉で説明しだすとキリがないほどの状況設定を、テンポの良い描写でスムーズに馴染ませられる手腕はさすがである。一方で、これは原作では3部作の一つにあたり、未知なる”新世界”について語りきれていない部分があまりに多い。また、企画の初期段階ではチャーリー・カウフマンが脚本執筆を担っていた(完成版のクレジットからは外れている)ことを思うと、本作はもっと予測不能な方向へ振り切れてよかったのではないかという考えも頭をよぎる。果たしていつの日か我々が続編を目にする機会はやってくるのだろうか。
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