「映画的な映画ではない」最高に素晴らしいこと irohaさんの映画レビュー(感想・評価)
映画的な映画ではない
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エンドクレジットの始めにあるように、精神疾患を持つ人に向けての映画として良い作品だと思います。未遂経験のある私からすれば(アメリカ的なラブロマンス要素を除けば)かなりリアルな展開でした。
作中、バイオレットやセオドアが精神疾患に苦しむ描写はそれほど強くないのにも関わらず、最後にセオドアは突発的に自殺します。これは重い疾患を抱えていても、殆どの人は側からみれば健常者に近く見えることを表しています。特にセオドアの表情や挙動の機微に躁鬱の気質が見られる演技は素晴らしかった。バイオレットの終盤の橋でのシーンも良かったです。アマンダに至っては全くその素振りを見せずに終盤で過食症と自殺未遂経験を告白します。過去の虐待や交通事故を映像で描かなかったのもリアルな表現に拍車をかけている。現実では人間の心の闇なんて可視化できるものではないから。自殺はずっと抱えているものが僅かなすれ違いや小さなストレスがトリガーとなって爆発し突発的に現れます。セオドアの死は入水や死体の描写がなく、あっけなく描かれますが現実もそんなものです。高校生の頃、友人が亡くなったことも思い出しました。
終盤のセオドアと姉ケイトの会話シーンは、「いまを生きる」のニールと父親の会話シーンを思い起こさせました。セオドアもニールも"Nothing."と答えずに本心を話せてたら自殺はしなかったでしょうが、それが出来ていたらここまで追い込まれなかった。精神疾患は本当に難しい病です。
名所を巡る美しい情景は映画的で非常に優れていると思います。
私は映画にはエンタメ要素も求めているので、あまり合わなかったです。教材として見るなら良いと思います。
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