「ドラマ版ほどは」劇場版シグナル 長期未解決事件捜査班 でいさんの映画レビュー(感想・評価)
ドラマ版ほどは
二つの時間軸を結びつける壊れかけた無線機により未来変革のSF要素もあるクライムサスペンス。
韓国ドラマのリメイク作品から日本版オリジナルの劇場版として制作された。
本作においても坂口健太郎演じる三枝と吉瀬美智子演じる櫻井たち警視庁未解決事件捜査班と過去の時間軸にいる北村一輝演じる所轄刑事大山が連携して連続事件の謎を追い、未来変革の可能性を追い求める。
テーマは「サリン」を彷彿とさせる化学兵器であり、過去(2000年代初頭)に発生した「地下鉄サリン事件」を想起させるカルト教団による無差別大量殺人事件と警察が押収した化学兵器の行方。そして、事件の決着に関与した政治家、警察官僚たちへの交通事故を装ったテロ殺害事件の接点を三枝たちが追い求めていく。
ドラマ版では生存が確定し、入庁した三枝、成長した櫻井と対面する筈だった大山がやはり殉職していた。
鍵となるのは大山が偶然居合わせ目撃してしまった交通事故を装った化学兵器による殺人事件における重要な目撃証言であり、同様の手口が約20年後にも用いられていた。
しかし、手口を暴いたことで決着した筈のテロ事件が未解決であるとなり、過去に大山の提出した調書は黒塗りにされ、大山と三枝も黒幕に命を狙われることになっていく。
三枝は大山の顔しか知らず、大山は三枝の顔も知らない。
二人を知るのは大山の後輩で三枝の先輩であるヒロインの櫻井のみ。
その三人の絶対的な信頼関係が警察組織の巨大な陰謀と、ある男の復讐劇を暴いていく。
ベースとなる前提が秀逸であり、繋がったり繋がらなかったりする無線機の気まぐれが思うように捜査を進展させず、事件捜査で巻き添えに遭う人々の生死も解決結果次第で変化し、三枝や大山の記憶認知も書き換わる。
本作では肝心な場面で茅の外に置かれる大山のこともあり、全体としては物足りなさを感じる。
ドラマ版のクライマックスは罠に掛かった大山とそれを救出する櫻井にあり、三枝は頭脳派として大山救出作戦の指揮官に位置していたのでとてもバランスが良かった。
つまり、そっちの展開の方が良く、三枝が犯人と直接対峙するのはなにか違う。