劇場公開日 2020年11月20日

  • 予告編を見る

「The Stupid in America」エイブのキッチンストーリー 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)

2.0The Stupid in America

2020年11月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 予告編を観て、料理の才能のある天才少年が活躍するほのぼのとした映画だろうと思っていただけに、十二歳の主人公エイブの家族たちのいかれた精神性に驚いた。ドナルド・トランプに投票するのはこういう人たちなんだろうなと思った。英語で言えば、The Stupid in America だ。
 祖父母は揃って不寛容なナショナリストで、母親は息子に信仰を強制する狂信者、父親は息子に無宗教を強制する独善主義、そして全員が無教養な愚か者ときては、主人公エイブに救われる道はない。
 アメリカの馬鹿な人々を笑い飛ばすブラックコメディなのかと思って観ていたが、最後は集まって笑うという整合性のなさと、恥知らずなご都合主義に思わず仰け反ってしまった。リアリティの欠片もない。
 これほど破綻していて不愉快な映画も珍しい。役者陣がそれぞれに愚かな人間を上手に演じていただけに、折角できたお膳立てをひっくり返すことなく、そのまま不幸でどうしようもない結末にしてほしかった。本作品では製作者も登場人物の家族たち並みに愚かであることを公に晒しているようなものである。音楽もひどかった。
 エイブ役の少年がなまじ好演していただけに、実に残念である。こういう作品を作ろうという世界観が、ドナルド・トランプに投票した人たちの精神性に直結している気がした。

耶馬英彦
耶馬英彦さんのコメント
2020年12月7日

 namakemono_SGさん、コメントありがとうございます。
 まだ本作品についてのレビューを挙げられていないようですが、「新しい世代が如何に自己を確立するか」という、当方の頭では到底思い至ることの出来ない崇高なテーマについて、是非御高説を拝読したく、鞠躬如として恐縮しつつ、お願い申し上げる次第でございます。

耶馬英彦
namakemono_SGさんのコメント
2020年12月7日

批判にあるような無教養で独善的な連中の中で否応無く生きざるを得ない
劇中の言葉を借りれば「親は選べない」中で
新しい世代が如何に自己を確立するかという風に捉えれたので
私には良い映画に感じられました
確かにフィクションとして終盤の展開はリアリティラインを下げるものではありましたが
製作者の描きたい理想を考えれば納得できるものではありました(個人の意見です)

namakemono_SG