劇場公開日 2020年3月6日

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「緩やかな混沌」ザ・ルーム KinAさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5緩やかな混沌

2020年3月21日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

なるほど、「愛すべきZ級映画」とはこういうものなのか。こういうことか。
気の抜けた笑いをいくつも溢し、面白いなあと思いながら観ていた。
大勢で嘲笑しながら観る鑑賞方法は趣味ではないので内心かなり警戒していたけれど、私の観た回は平和で良かった。

緩やかに混沌としていくストーリー。
意図不明のタイミングで意味不明の言動が繰り返され、とぼけた台詞に呆然とし、とんでもない棒読み演技に目を奪われた、謎シーンの連発に唖然とする。

しかし、なんだかもう逆に面白い。
転んでも転んでも起き上がってくるような超ド級の愛嬌に押しに押され、楽しく観られた。
ソシオパスクソビッチと繊細ロン毛おじさんと優柔不断イケメンの三角関係がどんな結末を迎えるのか、気になって気になって仕方がなかった。
まさかあんなことになるとは…あたしゃびっくりだよ。

やたらと長く詰め込まれる濡れ場とコテコテのロマンスソングが好き。
自立心ゼロの未成年…かと思いきや成人してた男の子の謎感がすごい。お前まじでなんなの?
友人の家をラブホ代わりにするカップルとか、まともかと思いきやそうでもない友人男とか、とにかく登場人物だいたいトチ狂っていた。

「ザ・ルーム」というタイトル、入れ替わり立ち替わり人が集まる部屋という意味なのかしら。
映画としての出来は酷いものだけど、それが逆に強みになるのは面白いことだと思う。
ただ、それをネタにしすぎてもスベってしまうし、難しいよね。私は結構嫌いじゃない。

実は最初、作品の内容を勘違いしていた。
このタイトルとポスタービジュアルから、部屋に閉じ込められた男が狂っていくスリラーだと思い込んでいて、上映が始まってようやくその認識の間違いに気付いたのだ。
いやしかし、観て良かった。

きっと映画が大好きで憧れて憧れて作ったんだろうな。
作品の持つ愛嬌とか、映画への愛とか、尊敬の念とか、そういうのって時としてストーリーの面白さを越えるじゃない。そういうことなのよ。いや知らんけど。

KinA