劇場公開日 2021年2月6日

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「映画制作の可能性を広げた作品」モルエラニの霧の中 山の手ロックさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0映画制作の可能性を広げた作品

2021年4月12日
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鑑賞方法:映画館

室蘭在住の坪川拓史監督が、5年もの歳月をかけて作り上げた、インターミッション付き3時間半を超える映像作品。よくぞこれだけのものを、地元の資金とボランティアの力を得て完成させ、公開に至らせたものと感嘆する。
エピソードと登場人物が重なりながら、バトンを渡すように7つの物語が繋がっていく構成。ストーリーを追っていっても、人間関係はよくわからないし、意味不明なシーンも結構ある。しかし、作品全体としては、室蘭という土地にこだわり、その土地で忘れられかけている人や風景(いわば、土地の記憶)を映像作品として留めようとしていることはよく理解できる。
室蘭は、クルーズ船が入る港や工場群と、イタンキ浜や屏風岩など絶景ポイントが身近に共存している不思議な街。水族館や青少年科学館(今年3月で閉館!)を含め、室蘭の現在と過去を、劇映画として作品化した監督の執念と地元の人々の熱意に、室蘭に縁がある者として、心から感謝する。
役者陣も、有名どころからエキストラまで、みんないい味を出している。特に、第3話の小松政夫。これが遺作となったことは、この作品のテーマと相まって、感慨深い。ラストの第7話の母と娘は、汽車で向かい合って座っている横顔を見ると、本物の親子みたい。
見終わってみると、第1話の宮沢賢治風の物語が、ちょっと異質。自分としては、第6話の表現主義のような演出(最後の人を想起)が特に面白かった。
映画制作の可能性を広げるエポックメイキングな作品であり、この作品から勇気を得て、地方に根ざした作品がさらに生み出されてくれることを、大いに期待したい。

山の手ロック