劇場公開日 2021年12月17日

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「醜悪な人間の欲深さ」ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男 yoneさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5醜悪な人間の欲深さ

2021年12月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

巨大なアメリカの化学メーカー「デュポン」。
この会社が数十年前に開発した、焦げ付かないフライパンなどに使われていた「テフロン」。このテフロンなどの原料となる人口の化学薬品「PFOS」「PFOA」が、人体や他の動物にも発ガン性などの悪影響を与えており、さらにデュポンは社内リサーチでその危険性を知っていたのに、そのまま使い続けて河川や土中などに廃棄し続けた。自社の利益だけのために。
(このPFOSやPFOAはテフロンだけでなく、撥水性のある服や様々な用途で使われている)

その被害者が原告となり、デュポンと戦った弁護士が主人公の作品。

こういった作品が映画として作られるのは、さすがアメリカと言う他ない。
ぶっちゃけ、アメリカが良い国とも住みたいとも全く思わないが、こういう問題に向き合うジャーナリズム精神というか、社会へのコミット度合というか、日本には全く無いリソースは羨ましく思う。

俳優陣もシブい。
主人公のマーク・ラファロは当然として、主人公の妻を演じたアン・ハサウェイも良かったし、久々にティム・ロビンスを観れたのも嬉しかったなー。もう、おじいちゃんです。「ショーシャンクの空に」とかもう30年近く前の作品だもんな。おじいちゃんにもなりますわな。

しかし、デュポンや、同じく発ガン性で問題となった除草剤「ラウンドアップ」を製品販売してたモンサント(現バイエル)など、化学薬品扱っているメーカーって、倫理観が欠如してる会社が多いのかね。。消費財だから影響が大きくて被害が大きく見えているのかもしれないけど、皆が使う消費財だからこそ、扱うメーカーには高い倫理観が必要なのに。

しかも、忘れちゃいけないのは、世界中で禁止されている「ラウンドアップ」が、日本ではいまだに使われてることだ。農家では普通に使っている。アメリカでは裁判で数百億円の賠償金支払われて決着してる問題なのに。日本は世界(アメリカ)のゴミ箱ってわけだ。このPFOSの問題も同じ結末を迎える可能性がある。

アメリカの要求を跳ね除けられない日本政府には期待できない。官僚も国民のことなど考えていないだろう。前2代の首相時に明らかにそちらに舵を切ったし、コロナ対応で実証もされた。しかも、その政治を担う政治家を選んでるのは国民だ。先月の総選挙の結果からもわかる。現状を変えたくない人ばかり、ということだ。つまり、この作品でも語られている通り、「自衛」するしかない。

その「自衛」に何が一番重要かというと「情報」だ。
こういった映画だ。
知らないと対処のやり様もない。

その情報を扱うマスメディアが日本では一番信頼できないので、自分で信頼できるメディアソースを探し、情報を取捨選択した上で、今後も自分の頭で考えていこうと思う。この映画を観て、その思いをさらに強くした。

yone