「不毛」ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男 キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)
不毛
物語で登場人物が大きな力と戦う時、何度となく「絶望」に襲われる。
もちろん主人公がその力に負けていては話が進まない訳だが、それにしても、これが実話で、こうも次々と苦難と絶望に見舞われると、やはりその意義や正当性よりも「タフさ」の重要性が際立ってくる。
この主人公はまさにその「タフ」を象徴しているが、彼もまたこの戦いの中で健康や安全、家族との時間や関係を危険にさらしている。
この戦いで仮に勝ったとして、彼らや被害者たちは何を手に入れるのかを考えると、結局のところ「失った時間や健康や人間関係や大事な人は帰ってくることはない」という虚しさに行き着かざるを得ない。
こんな不毛な戦いでも、次の生活、次の世代のために、やはり我々は勝ちを求めるしかないという皮肉。
現実の被害者が未だに戦い続けている現状で、ハリウッドスターでありながら、社名や人名など、実名を使った作品を手掛けたマーク・ラファロの思いには頭が下がるし、同じく名のある俳優陣が参加している辺りも、エンタメの持つ力を信じている彼ららしさにあらためて感服する。
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