劇場公開日 2021年12月17日

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「世界的超巨大企業の闇と闘う一弁護士の姿を通して現代という時代の危うさを照らし出した社会派映画の良作。」ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男 もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0世界的超巨大企業の闇と闘う一弁護士の姿を通して現代という時代の危うさを照らし出した社会派映画の良作。

2021年12月20日
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鑑賞方法:映画館

①一企業の(社会的な)罪を暴く話の向こうに、我々現代人が「便利さ」「豊かさ」の代償として支払っているものに思いを馳せさせられて暗然とする。②巨悪に個人が立ち向かい最後に逆転勝利を掴む、と映画を観ているものとしてはスカッと行きたいところだか、現実は相手が超巨大企業や政府機関等であればあるほど闇は深く一筋縄では行かない。ロブが、結局個人が自分を頼りに闘って行くしかない、という結論に達するところはせつなくもあるが、ラスト、それでも3,535(だったかな?)件の訴訟に怯まず立ち向かっている姿がこの映画に希望をもたらしている。③言論の自由・表現の自由があり、こういう映画を作れる我々の社会は一方で様々な問題が山積しているとはいえやはり有難いと思う。最近とみに言論・表現の自由を今まで以上に抑圧してきている某国家に比べると。④マーク・ラファロは、もともと上手い人ではあるが、ロブの人物造形が素晴らしい非常な好演。それと、偶々ではあろうが『フォックスキャッチャー』ではデュポン家の御曹司に射殺されるレスリングコーチの役で、本作ではデュポンの隠蔽工作を暴き告発する弁護士の役と、映画の上で敵討ちをしているようで面白い。⑤アン・ハサウェイは『魔女がいっぱい』で大いに笑わせてくれたが、ここでは自己をしっかり持った知的な良妻賢母を確かな演技力で好演。⑥懐かしやメア・ウィニンガムがすっかりオバサンになって登場。⑦トッド・ヘインズの静謐で抑制の効いた演出が題材に良く合っている。現代のアメリカ映画界で信頼できる監督の一人。

もーさん