「マーク・ラファロの信念を見た」ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
マーク・ラファロの信念を見た
本作のストーリー構造はオーソドックスだ。組織の不正を暴いたり、孤軍奮闘で正義を貫いたりーーーそんな類のものはすでに数多く見たよ、と言われればそれまでだが、しかし本作が何より秀でているのは、グッとテンションを抑えて、夜闇にほのかな光が浮かび上がるイメージを絶やさないところだろう。それは闇に立ち向かう唯一の希望のようであり、押し潰されそうになりながら決して諦めない主人公の心境をも投影しているかのようだ。マーク・ラファロ演じる弁護士は背中を丸め、冴えない男みたいに見える。そんな彼が見過ごせない事実に気づいた時、引き返せぬ一歩を踏み出す。時には上司にため息を吐かれながら、なぜ彼はこれほど身を捧げることができるのか。単なる告発モノにとどまらず、コミュニティや家族、それに宗教的なモチーフが挟み込まれているのも興味深いところ。製作を兼任しチームを率いたラファロ、カメラの前でも後でも最高にいい仕事をする。
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