劇場公開日 2020年3月13日

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「画面の隙間から聞こえてくる人々へのエール」ジョン・F・ドノヴァンの死と生 MPさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5画面の隙間から聞こえてくる人々へのエール

2020年3月28日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

幼い頃、レオナルド・ディカプリオにファンレターを送ったことがあるというグザビエ・ドラン。そんな自身の体験から発想したという最新作は、母と2人で暮らす少年の孤独と、ハリウッドで活躍するスター、ジョン・F・ドノヴァンとの孤独が重なり合って、単なるスターとファンの交流という枠を超えて行く。興味深いのは、
自分のセクシュアリティを隠して生き続けなければならないスターという稼業の窮屈さ、不自然さ、悲しみ、エゴが、キット・ハリントンという適役を得て切ないほど観客に伝わってくるところ。特に、キャシー・ベイツ演じるベテラン・エージェントがジョンに対して突きつけるショービズ界の非常な現実は、怖すぎて震える。やがて、ジョンと同じように、ハリウッドのどこかにいるに違いない、本当の自分を偽り続ける人々へのエールが、画面の隙間から聞こえてくるような気がするのだ。勿論、それはすべての人へのエールでもある。

清藤秀人