「新ジャンル」コンフィデンスマンJP プリンセス編 U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
新ジャンル
なんかこおいうのもアリかなと思ってきた。
ドラマなんだけど、ドラマを語らないというか語れないというか…良さげな話は展開されるんだけど、深くは語られない感じ。
表層だけ、分かりやすい部分だけを提示しておきました。だってみんな小難しい事嫌いだろ?
なんか…そんな雰囲気がある。
だから新ジャンル。
どおしてもバラエティ感が拭いきれない。
そっち方面のノウハウは腐る程豊富にあって、それに結果も伴ってた時代もあったからある意味正義なのだろうけど、そのおかげでテレビの知性は下がったと思ってる。「知性なんか要らないよ、そんなもんで視聴者は観てくれるのか?観てくれなきゃ何を言っても始まらないんだよ。視聴率こそが法律なんだよ。それを稼ぐ為にやる全ての事はTVとしての正義なんだよ。
いい番組作ろうが、くだらない番組作ろうが視聴率を稼げなきゃ番組自体、いや局自体が存続しないんだから。青臭い事言ってんじゃねえ!」
…確かに一理ある。
が、問題がねえわけじゃねぇだろ?
ホントにバラエティ撮ってるみたいで泣けてくる。
終盤にサバイバルナイフのようなデカイ刃物で刺されて絶命するふりをするのだけれど…種明かしのシーンになってそのプロテクターの薄い事ったらない。
あんな重量物が人体に垂直に立つにはそれなりの深さが必要じゃあないですか?
コテなんとかって役者に至ってはブローチ一個で命拾いしてる。
でも刺さってる描写は刃の半分近くが人体に埋まってる…こんな不可思議な描写があっていいのか?
「いいんじゃない?誰もここで全員死ぬなんて思ってないし、えっ!?って思わすインパクトだけありゃいいんだよ」
そんな声が聞こえてきそうだ。
ヒロインがキーアイテムでもある小汚い人形を取り出すのもそう。
「いつ会えるか分からないから肌身離さず持ってました」そおやって首から下げた人形を取り出すのだけれど…そのシーンは結構ドレスアップしていて、財閥の後継者たる宣言をする公の会場だ。
そんな面妖な行動に出る??
「いいんだよ、ここで出さなきゃいつ出すんだよ?そおいう事だってあるかもしれんだろ?」
胸元がガッツリ空いたドレスの首元に小汚い紐をずっとかけてる乙女の精神ってどんななのよ?
三浦氏と長澤さんがパーティ会場で出会し、踊りながらの交渉が始まる。
そこに現れる江口氏。
2人共、江口氏に見つかるとヤバい理由がある。
でも、踊るのをやめない。踊りながら台詞の応酬だ。
…目立ちまくりだろ?
結構距離も近い。そして踊ってるのはその2人以外にいない。誰かが江口氏の注意を引きつけるでもない。
どおいう状況??どおいう心情??
「いいじゃん、踊りながら。面白いよ!編集がややこしくなるから周りの人は要らないよ。フレーム外にいる事にしといて。」
そんなやり取りを想像する。
踊ってる2人も馬鹿なら、気付かない江口氏も馬鹿にしか見えない。
苦言を言ったところで聞く耳をもたないのだろう現場の空気感を想像してしまう。
もう、全部が全部こんな調子。
「誰もコンフィデンスマンにそんな事求めて観にこないよ。いいんだよ、ワッて笑って適度にジーンとさせて楽しかったねえって帰っていけば」
そんな声が耳鳴りのように聞こえてくる。
だから、新ジャンル。
金をふんだんにかけた出来の悪いコントを見せられてるようだった。
なんとなぁくカリオストロのルパン3世に寄せてきてるようにも思うから尚更腹立たしい。
「いいね、面白いねー」なんてやってるのは江口氏くらいなんじゃなかろうか?
大半の役者は諦めの極地にいるのかと思う。
いや、そうであって欲しいと願う。
あと、三浦春馬さんのご冥福を祈ります。
どんな役をやられても嫌味がない稀有な存在感を本作でも発揮しておられた。
なんの偶然かは知らんけどエンドロール後に長澤さんが言う「死ぬんじゃねえぞ」って台詞が耳に残る。
作品のどこにも追悼の言葉がなかったから、再編集する時間すら無かったのだと思うけど、これも1つの話題性としてのチョイスであるなら演出の人間性をも疑う。
が、話題性を優先するってTVマンの価値観はある意味正しいとも思う。
殺伐とした世界ではあるが、それも覚悟の上なのだろう…。