「圧巻の風景と甘やかされた現代人の対比」ターコイズの空の下で Looking for JJさんの映画レビュー(感想・評価)
圧巻の風景と甘やかされた現代人の対比
寓話的な部分も沢山あったけど、旅好きであちこちで珍道中を経験した人間として、ロードムービーとしては単純に楽しかったです。
俳優陣の素に近い(と思われる)演技や即興も新鮮でし。
監督が舞台挨拶に来てました。おしゃべりも楽しい方でした。
ただ、私が引っかかったのは、女性への視点、モンゴルへの視点です。
敏感過ぎるかもしれないけれど、女性への視点について不快だと感じる部分があったことと、もうひとつは、想像でしかありませんが、モンゴル人の方々がこの映画を観て、不快だと感じる部分もあるのではないかと思いました。念のため記しておきます。
以下、そんな視点はどうでもいい方は読み飛ばしてください。
初めのタケシの放蕩ぶりで出て来るとりまきの美しい女性たち、初めと最後に出て来る美人秘書、サブローが戦時中モンゴルに置き去りにした女性と娘。
映画の中こそは好きな表現をできる場であって欲しいし、またこの映画は男性の夢が詰まった要素が多分にあるように思うし、現実にはお金持ちの男性に女性が集まるし、それがまたステータスになっている、と理解はしてはいます。
またモンゴルも、自然の素晴らしさと移住の伝統を継ぐ、海外都市に住む現代人にとっての、現実逃避的な側面も持つ国だと思います。
ただタケシにとっては、女性もモンゴルも、経験の一通過点でしかないんだな〜と。美人秘書やとりまきの女性はともかくとして、サブローの娘ツェルマや、旅の途中行き倒れたタケシを助けた女性は、サブローとタケシの自己満足に巻き込まれただけで、何も報われていないように見えてしまいます。ちょっと被害妄想的でしょうか。。
タケシが、その出産に立ち会うことになった女性。経験者しか分からないが、出産は生死をかけた恐ろしく大変なもの。更に出産後からが1番ハードな闘い。一方彼女の出産直後、タケシは彼女に寄り添う間もあまりないまま、外気を吸い湖に浸かりにゲルの外へ。エラい経験しちまった〜!って感じだろうか。それまで無為に生きて来たタケシにとっては、生きることについて初めて深く感じた経験にはなったのだとは思うけれど。
戦後のサブローも生馬の目を抜く凄まじい時代だったのだとは思うけれど。
映画の最初と最後の会社のシーンは、私に以下を想起させた。
サブローもタケシも結局モンゴルを去り、何事もなかったかのように日常に戻って行ったのだ。サブローにとっては外地での思い出、タケシにとっては旅先でのイベントのひとつとして、、
モンゴルは疲れた現代人の精神を解き放つためにある保養所ではない。モンゴルの方々にこの映画がどう映ったのか、是非伺ってみたいです。
>この作品を理解できる人にとってラストの部分は蛇足だ。
とコメントしている方がいましたが、深く納得です。