「猿と人間の違いはあるか」MONOS 猿と呼ばれし者たち 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
猿と人間の違いはあるか
これはすごい。社会の外に広がる荒涼とした世界で生きる若者たちの物語だが、悲惨で過酷なだけの話ではない。「猿」と人に向かって言うのは、侮蔑的な意味合いだろうと普通は思う。実際、この映画では過酷な戦闘員として山岳地帯で非人間的な扱われ方をする若者たちが出てくる。まさに獣のような残虐性を秘めた少年・少女兵に鍛えられた者たちなのだが、そこには人間社会が失った原初的な感性があるのも確か。殺風景な山岳地帯にモノリスのような石がそびえたち、どこか異空間につながった世界のような場所で展開される物語で、彼ら・彼女らは強烈な生の輝きを放ってしまっている。
人の本性は動物であるとするなら、本作が描く人間の姿は現代人が喪失した人間性(動物性)を確かに有している。後半、舞台が深い森の中に変わると、さらに登場人物たちは動物的になっていく。森での中で動物的な人間性が立ち現れる様は、アピチャッポン・ウィーラセタクンの映画のようでもある。
猿と人間の間にどれだけの差があるのか。実はないのではないかと思わされる。
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