「体感するサバイバルドラマ」MONOS 猿と呼ばれし者たち 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)
体感するサバイバルドラマ
コロンビアのジャングル深くに潜入し、コミュニティを形成している若いゲリラたちが、密林の中で常軌を逸し、次第に野獣化していく。実際に南米コロンビアで半世紀以上続いた内戦を背景にしているという。閉ざされた空間に閉じ込められた子供たちのサバイバルという意味では、他でも指摘されているように、太平洋上の孤島に漂着した少年たちの豹変ぶりを描いた『蠅の王』('63、'90)の系譜に属する作品なのかもしれない。
しかし、『MONOS』の舞台はゴツゴツとした岩山がある山岳地帯と、主な背景になるジャングルだ。物語の設定とは裏腹に美しく濃厚な緑に覆われた世界は、見るからにじめじめしていて、あちこちでアブのようなものが飛び交っている。場所によってはビニールを頭から被らないと寝られない。そこを絶妙なサウンドエフェクトがカバーしていく。夜のしじまから聞こえてくる虫の音、木の葉を揺らす風、川のせせらぎと水中で水が渦巻く音etc。また、ティンパニーやガラス瓶に息を吹き込む音を合成したという"映画音楽"が、それら効果音と見事に一体化して、観客をジャングルのど真ん中へ引き込んでいく。
戦争の残酷を少年たちの肉体で表現した本作は、衝撃的な映像と音によって脳裏に焼き付く、体感するサバイバルドラマだ。
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