「生と死をめぐる壮大でかつミニマムな寓話」Away りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
生と死をめぐる壮大でかつミニマムな寓話
ラトビアのクリエイター、ギンツ・ジルバロディスが独力で製作したアニメーション映画。
パラシュートで木に引っ掛かり目覚めた青年。
彼が気づいた周辺では草花が繁茂し、生命を謳歌している。
が、少し離れた石造りのアーチ状のゲートのところでは、得体のしれない黒い巨人が立って、見張っているようにみえる。
パラシュートから降りた少年は、近くで発見したオートバイと地図の入った雑嚢を頼りに、いまいるところが島で、北に何かへ通じる道があることを知る・・・
といったところからはじまる物語で、全編セリフを排したCGアニメーション。
物語は「禁断のオアシス」「鏡の湖」「眠りの井戸」「雲の港」と名付けられた4つの章に分かれて展開します。
セリフがないので細部は観る側の想像に任せているだろうけれど、おおむね次のとおりでしょう。
少年は、ひとり、飛行機事故で命のたすかった少年であること(途中でわかります)。
ゲートの近くにいる黒い巨人は、「死」そのものであること。
少年が目指す島の北端は、「生」そのものであること。
基本的に、ここまでのところは明確であるけれども、細部の解釈は異なるかもしれません。
それを踏まえて、個人的な解釈です(ストーリーを解説しているわけではないので、ご了承ください)。
序盤で、少年と出会う黄色い小鳥は、少年の生命の暗喩であること。
島を飛び交う白い鳥は、飛行機事故の犠牲者たちの魂であること。
このふたつはたぶん誤りではないと思うので、さらに解釈すると
「禁断のオアシス」は、なにがしらの生命の地であること(ただし、いま生きている命の地ではないかもしれない)。
なにがしらかの生命の源は「眠りの井戸」の泉であろうこと。
その泉の水を飲む黒猫たちは、飛行機事故の犠牲者の暗喩であること。
(生命の泉ではあるが、生きようと思っているひとに対してと、死んでしまうだろうな(もしくは死んでしまった)ひとへの効果が異なるのかわかりませんが)
眠って目覚めてを繰り返す黒猫たちの輪から逃れた少年は、最終的に、雲の港にたどり着く直前に遭遇する瀕死の少年の命を助けるのが、水筒からこぼれ出た泉の水なので、少し解釈が難しいです。
と、いわば、このアニメーション映画は「生と死をめぐる壮大でかつミニマムな寓話」なので、どのように感じるかは観る側にゆだねられているのかもしれません。
なお、本編終了後に、日本側で映像を再編集したエンディングが加えられています。
本編のテイストとかなり異なり、ジョン・ミリアズ監督『ビッグ・ウエンズデイ』や、ピーター・メダック監督『チェンジリング』を観たときと同じく「余計なことを・・・」と感じましたが、日本版エンディングに監督がメッセージを寄せていますので、これはこれでありなのかもしれませんね。