「邦画の次を行くようなバランス感覚、都会では写らない田舎が見えてくる」光を追いかけて たいよーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
邦画の次を行くようなバランス感覚、都会では写らない田舎が見えてくる
言葉では形容しがたい強い衝撃を覚えた傑作。秋田という土地柄に透けて見えるリアルと喪失、そこに伴う生の声がハウリングする様な怪作。
都会のボーイミーツガールであれば、多少の波乱もすんなりも吸収してしまう空気がはびこっている。しかし、秋田という自然豊かで美しい田舎を舞台にしてもこのような世界が成り立つとは。ハッとさせられて、その土地に響き渡る生の声がそのまま投下されたような映画だった。
というのも、この作品のキーとなるのは「田舎」なのである。主人公は父の故郷として秋田に引っ越しており、言わば「街の外から来た人」なのだ。そんな彼を不思議な女の子と結び付けるのは、UFOという大胆さ。非現実が落とし込まれたことによる混乱と、そこで浮き彫りになる現実が心を抉る。そして、何よりその空気をありありと逃さずに捉え抜く演出力が素晴らしい。中学生であるが故の不純で制御が難しい感情をむき出しにするパワーも強くてしなやか。そこが一番大きいと思う。
それでいて、柳葉敏郎に生駒里奈、駿河太郎といった大人による均衡が取れているので、まとまって見える。都会では感じることのない痛みを乗りこなす、そんな術を知っているかのような格の違いも感じる。その一方で中川翼、長澤樹、中島セナといったティーンの俳優たちも心強い演技が魅力的だった。そうした個々の引き立ちも1つの作品の持ち味と言える。
このような怪作が話題にならないなんて勿体ない。とは言え、自分も駆け込みで観た側であるのでなんとも言えないが…。邦画の素晴らしさを再確認すると共に、土地柄を生かして作り上げた点からも日本の良さが滲ませればもっと鋭いものが生まれるとつくづく感じた。
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