劇場公開日 2021年10月1日

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「出演陣の魅力、秋田の田園風景。見所多いが、もどかしさも」光を追いかけて 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5出演陣の魅力、秋田の田園風景。見所多いが、もどかしさも

2021年10月7日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

幸せ

萌える

Huluの「息をひそめて」で気になっていた長澤樹がヒロイン・真希役で堂々の初主演。個性的な顔立ちの美少女で演技力も確かなので、活躍の場が今後ますます広がるだろう。「閉校祭」実行委員・沙也加役の中島セナも同級生にきつい物言いをする責任感の強い生徒をうまく演じていたが、彼女の違う表情ももっと見たいと感じた。柳葉敏郎と生駒里奈は、さすが秋田出身だけあって方言の台詞に味があり、人物造形に深みが増している。

秋田県井川町でのロケ撮影は2019年9月に行われ、収穫前で一面黄金色の稲田をドローンによる空撮も駆使して見事にとらえた。特に、傾いた陽を受けて輝く稲穂を背景に収めたシーンなどは、ドラマの情緒的な流れを効果的に盛り上げている。

CMディレクターとして活躍し、本作が映画初監督となる成田洋一も秋田出身だそう。共同で脚本も手がけ、単に美しい背景として秋田の要素を使うだけでなく、過疎化と産業の斜陽化、廃校といった地方の課題と、少子化、いじめ、不登校、SNSの悪用といった今の日本に共通する問題を盛り込んだ。

中学3年の級友たちが閉校祭というイベントの準備に取り組む様子、UFOの目撃、そして主人公・彰と真希の出会いと心の交流が映画を牽引する3つの筋になるが、これらの絡み合いが深まっていきそうで、そうならないのがもどかしい。トピックを多く盛り込んだのはいいが、それぞれの化学反応が表層にとどまり、映画のテーマが散逸的であいまいになってしまったというか。俳優のアップでも背景込みの構図でも、印象的なショットを撮ることに長けた監督なので、次作でドラマ要素を強化してさらなる飛躍を期待したい。

高森 郁哉