劇場公開日 2019年11月15日

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「美的センス爆発のホラーマニア監督」マーダー・ミー・モンスター MASERATIさんの映画レビュー(感想・評価)

1.5美的センス爆発のホラーマニア監督

2020年2月13日
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良質なモンスター・パニック映画の風貌をまとい、映画祭やら何やらに正式出展されたと聞くと、期待が止まらない。
冒頭、羊の群れの中に一頭だけ血のかかった羊が。それらをかき分けるように首を深く切られ、今にも事切れそうな女性が現れる。この美的なセンスにはやられた。どんなストーリーで、どんなモンスターで、どんな恐怖を味わうのか。
この時点でBlu-rayを購入しようかと思ったものだが、それは結局実現しなかった。

時折モーガン・フリーマンに見える主人公を含め、登場人物は皆演技は上手いだろうが、全員がカタツムリに思えるほどゆったりとした物語が展開されていく。車ですらゆっくりと進み、とにかく何を取っても「遅い」のだ。その中で見せる映像の美しさには魅了されるが、ストーリーも意味深なキーワードは出てくるものの、ハッキリとしない構成で疑問が多く残る。観客がそれぞれ考察する様な構成なのだろう。

結局、あのモンスターは何なのか。3つの「M」がそろう場所で首のない惨殺遺体が発見されるというミステリー要素がふんだんに使われるものの、それでなぜあのモンスターがいるのかが明記されないのである。モンスターの姿は、何か性器を想像させるものだが、人間の欲の一つである「性欲」を具現化したものだろう。というのも、主人公は、ある女性と不倫関係であり、劇中で「そんなの誰でもやっている事だ」と肯定ともとれる台詞がある。 この様な人間の持つ欲求により恨みや憎しみが生まれたりするものが物理的に人に危害を加えるバケモノとして登場したとも考えられる。また、主人公や警察署長が、モンスターと同じ緑色の唾液を出すシーンがあるが、これも多くを語られる事は無いため、疑問が残るのである。人間の心には怪物の様な一面があるということの表れか、ただ単に二人が殺しの犯人だともとれる訳だ。

色々と考えさせられる描写がいくつもあるのだが、次々と押し寄せる謎によって混乱するばかりである。期待とは違う作品だったが、監督はかなりの美的センスと、ホラー映画愛が溢れる監督なのだろう。

Mina
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