劇場公開日 2020年1月24日

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「身構える必要のない描き方に光る監督のセンス、偏見の世界を泳いでいることに気づく」his たいよーさんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0身構える必要のない描き方に光る監督のセンス、偏見の世界を泳いでいることに気づく

2021年2月9日
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鑑賞方法:VOD

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恋愛映画の名手、今泉力哉監督の最新作『あの頃。』公開にちなんで鑑賞。同性愛が題材だけに身構えていたが、それ以上のモノを突きつける優しい映画で、心が優しくなったような気がした。

迅は、自分がゲイであることを隠すことが最善であると考え、岐阜でひとり暮らしていた。そんなある日、かつての恋人の渚が、8年ぶりに現れる。子どもを連れて…。ここで描かれるのは、同性愛を入り口としながら、"偏見"を主軸に置いている。だから、他人事では全くなく、むしろ作品全体から、受け入れることへの葛藤と決めつけの危うさを炙り出している。その際、人の優しさが浮かび上がることで、暖かな作品へとまとめている。個人的には今泉力哉監督を、「時」「空」の使い方がうまい監督だと思っている。長回しから生まれる緊張感などの「時間」、距離感で雰囲気と感情を繊細に綴る「空間」。この2つがリアルかつ深いテーマへと誘う。よって、余韻と心に届くような作品の柔さを生み出している。こんなテーマだからといって、身構えることがナンセンスであり、意とせずとも色眼鏡はかかった世界を生きているのだと改めて気づいた。同時に、純粋たる子どもの土台にこそ、同性異性と隔てることのない価値観を生み出すことで、この世の新たなスタンダードが出来ていくのではないかと思った。

今のところは、まだまだ同性愛への理解が足りていないのが日本の現状。国の偉いお方がポロリと言ったのも、日本の風潮が根底にあることは否定できない。だからこそ、受け入れる器と勇気が、我々にも必要なのだ。愛を伝えるのが一層難しくなった今だからこそ、優しくなりたいと思える。

たいよーさん。