「また、素晴らしい映画が一つ!」his CBさんの映画レビュー(感想・評価)
また、素晴らしい映画が一つ!
新宿武蔵野館で観たら、今泉監督が同じ回を観ていて、握手して、パンフレットにサインしてもらっちゃいました! 愛がなんだ、アイネクライネ…、本作と才能がほとばしっている人に会えて嬉しい〜!
長身痩躯、頭ボサボサ髪と、写真どおりでした。優しそうな声だったな。
大学時代に付き合っていたゲイの主人公二人。一方は女性と結婚したが離婚調停中で、娘の親権争い前に、かっての彼が住む白川に、娘と二人でやってきて、一緒に住み始めるという話。
白川の自然あふれる景色の中での暮らしと、東京での暮らしと裁判が、見事に対比となって、まったりした流れに、小気味よいリズムを生み出している。
親権裁判の場での、双方の弁護士の辛辣な訊問が、LGBTに対する、あるいは働く母親に対する、普段の自分達が持っているかもしれない差別を、極めて冷酷に炙り出す。曰く「男性二人が子育てする普通でない環境」。曰く「子供の世話に全力と言ったり、子育てと仕事の両立と言ったり、腰の座らない言動」。それらは全て、かって俺自身がそう思っていたり、今でも潜在意識には残っているかもしれない感情。監督は、それら差別を、弁護士の言葉に載せて、辛辣に突きつけてくる。ほら、あなたもこう思っていませんか?と。
白川のこの人達のように「そういうこともあるか」と受け入れられますか?と。
そのせいか、一度は別れた主人公二人が、またカップルとなっていく様子は、ただの恋愛映画。揶揄しているのではなく、再び付き合い出す二人の様子が、"普通に" 恋愛。監督の腕なのか。
ただし、それらも凄いけれど、この映画は、子役(そらちゃん)がずるいでしょ。可愛すぎるでしょ。その圧倒的な存在感は、この映画の9割近くを占めて、他の要素を全て隅っこに追いやっちゃってます!
2020/3/10追記
本作の "優しさ" は、田舎が彼らをけっこう普通に受け入れることも大きな要素だと思うが、それは田舎の寛容さではなく、「発言力のある人の意見が全体の意見になる」という特徴が、いい方に転んだ例だとは思いました。ただ、自分はこういう点も含めて、今泉監督の "底の方に潜んでいる優しさ" を、好きです。
コメントありがとうございます。
同じ映画館で今泉力哉監督と一緒にご覧になったのですね。
すごいですね。
今なら割と普通に私たちも慣れてきたゲイの問題も、子供の親権が
絡まってくると当事者だけの問題ではなくなりますものね。
そのあたりが厳しい現実でしたね。