劇場公開日 2020年1月24日

  • 予告編を見る

「宮沢氷魚の自然体が新たな可能性を示唆」his MPさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5宮沢氷魚の自然体が新たな可能性を示唆

2020年1月31日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

一度は別れたゲイのカップルが、突然の別れを告げられた側が自身のセクシュアリティを隠して暮らす田舎で、再び突然の再会を果たす。あれから、相手は結婚し、別居し、傍に愛娘を連れていた。そうして始まる第2の同棲生活(+1)は、彼らの事情を深く追求せず、隣人として受け入れる山里のコミュニティの、他者に対して垣根を設けない寛大さによって支えられていく。一見、理想論にも思える設定は、脚本家のアサダアツシがかつてゲイの仕事仲間から言われた、「恋愛っていいなと思えるドラマをいつか書いてよ」という願いに答える形で生まれたもの。でも、この物語は養育権を巡って夫婦が対決する法廷の中で、シングルマザーとして子育てする妻側の言い分と事情もきっちり描いて、理想と現実の間にきっとあるはずの"落としどころ"を発見している。いろいろ事情はあるにせよ、人はどんな形でも寄り添えるに違いないという、理想を超越した確信のようなものが伺えるのだ。同時にこれは、自分を捨てた恋人を葛藤しながらも受け入れる主人公の、究極の恋愛ドラマでもある。演じる宮沢氷魚の自然体が、このジャンルの新たな可能性を感じさせて秀逸だ。

清藤秀人