「ホームビデオ」ミッドナイト・トラベラー パプリカさんの映画レビュー(感想・評価)
ホームビデオ
20年くらい前、某山間の村に存在する手掘り隧道の保管プロジェクトの一環としてドキュメンタリーが製作されることになり携わった。
撮影とは関係なく、村の運動会や夏祭りに参加したりと長期滞在の間に現地の方とはとても近しい関係になり、その後もたびたび訪れ交流は続いた。
そんな中起きた新潟中越地震、良くしてくれた方々の顔が浮かび何か出来ることはないだろうかと考えていた矢先、撮影スタッフらからカメラを持って向かうとの話が持ち上がっていた。
ドキュメンタリー作家ではない私は、取り急ぎ必要なのは直接的な手助けだろうと考えてしまったが、映像で残す事や伝えるのが自分たちに出来る事という彼らの考えに、スッキリしなかったのを思い出す。
この作品も同様に、映像作家としての自分と家族を守るお父さんの狭間で揺れ動く場面が出てくるが、作家とお父さんが一人称であるがためにホームビデオ感が拭いされない効果を生み出している気がしてならない。
iPhoneで撮影された、私たちの日常とはかけ離れてる過酷な場面を作品として観られるのも、監督の作家魂の賜物だろうと思う。
しかしだからといって、ドキュメンタリー作品として面白味があるとは限らない。
スマホの性能から撮るという事のハードルは格段に下がり、今まで見られなかった映像は身近になったが、ただ映像の垂れ流しでは惹きつけられない。
数年前に観たアレッポのドキュメンタリーもそうだったが、ホームビデオに毛が生えた程度に感じる作品が増えた。
映像としては貴重だが、ドキュメンタリーの質は下がっていないだろうか?
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