「00年代サブカル中高年達の立派な墓標」犬王 今日は休館日さんの映画レビュー(感想・評価)
00年代サブカル中高年達の立派な墓標
絵に描いたような時代劇×ロックオペラ。
ストーリーも一切の奇を衒わない直球のもの。悪く言えば色々な何処かで、散々見てきたプロット。
つまりは物語よりも、音楽やビジュアルを混じりっけなしで堪能してくれ。そのために物語はあえて様式的にしておいたぞ。という意図なんだろう。
ということみたいなので、音楽を軸に見るのだが、一言で言えば「感覚が時代遅れ過ぎて中年臭い」。
楽曲は80年代ロック丸出し。和風ロックみたいなことをしたいんだろうが、和楽器バンドを通り越して、感覚的にはほぼ人間椅子(人間椅子の方がカッコいいけど)。
後半はQueen色が強すぎて、ほぼ替え歌。王冠被って直訳で歌ってた「王様」を久しぶりに思い出した。
その上でさらに引っかかるのが、「ロックが我々を何かから解放してくれる」なんて価値観に、いまだに信心深いということ。驚かされる。いつの時代の話だ。
大見得切ってストーリーを捨てた割に、楽曲の力が全然及ばず。その背景にある想いも、アンティーク過ぎて動いてない。この時点で、映画の骨格は崩壊してる。
そして全編に漂う「00年代サブカルに引き篭もる中年の加齢臭」も、酸味がキツくてなかなか厳しい。公開時期を20年間違えたんじゃないかい? あの頃遊んでた人達は、もう誰も残ってませんよ? みんなAdo×中田ヤスタカの『新時代』を聞いてるみたいですよ。
抑圧されてもアイデンティティを捨てない路上のロックスターよりも、よりメジャーである為に作家性を後回しにできるAdoと中田ヤスタカにこそ覚悟を感じる。
とまぁこれは個人的なアレが過ぎるかもしれませんが。老人ホームでライブエイドの話に花が咲く時代です。それが素敵だと思うならば、どうぞご自由に。