「南北朝時代と現代を融合させた快作」犬王 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)
南北朝時代と現代を融合させた快作
5月28日に全国ロードショーとなった作品ですが、7月も中旬になった今でも少ないながらもまだ上映が続いており、人気の高さを証明している感じでした。上映館、上映回数ともに減ってしまっているものの、逆にそのせいで私が観に行った回は9割方客席が埋まっていました。
小説の原作は未読でしたが、室町時代前期の南北朝時代の歌舞音曲と現代のバレーやダンス、ロックを融合させ、とかく国籍不明のアニメ作品が多い中、日本ならでは作品に仕上げていたのは凄いと思いました。また声の配役も絶妙で、犬王を担当したアヴちゃん、友魚を担当した森山未來は、これ以上ないハマリ役でした。というか、彼らの存在があったればこそのアニメ化だったように感じられました。
歴史物、時代物という観点では、戦国時代や幕末~明治維新期の作品は数多あれど、南北朝時代を扱ったものは少なく、その点でも新鮮でした。
また人物描写も素晴らしく、南北朝を統一し、世の中の安定を図ることで足利将軍家の支配を安定化させようと考える足利義満や、芸のためなら全てを投げ打つ芸道の鬼と化した犬王の父親、義満に寵愛され能楽の保守本流となった世阿弥など、観ている方の想像力も掻き立てる程の出来栄えでした。
最後になりますが、犬王そのものが実在の人物であることを知り、自らの不明を恥じるとともに、驚愕しながら映画館を後にしたところです。
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