劇場公開日 2022年5月28日

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「ジャンルや時代性を超越した、奇怪で爽快なる逸品」犬王 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ジャンルや時代性を超越した、奇怪で爽快なる逸品

2022年5月31日
PCから投稿

いやはや唯一無二とでも呼べばいいのか。これまで観てきたどんな映画とも違い、しかしながら単なる時代劇、幻想劇にとどまらず、どの時代やジャンルにも通底するテーマ性を帯びた一作とも言える。異才と異才が出会うとき、彼らは互いに人間の五感を超えた感覚で相手を見極め、そこで巻き起こる爆発的な可能性に身を委ねようとする。青年が琵琶を爪弾けば、奇怪な外見をした犬王はフレディ・マーキュリーさながらのパフォーマンスとイリュージョンで京の都を席巻。現代に受け継がれし平家物語が当時はもっと多様性に満ちたエンタテインメントだったことへの示唆は実に新鮮かつ痛烈だ。古今東西、人はあらゆる概念を枠にはめたがる。しかしあらゆる革命は頭で考えず肌身に何かをビリビリと感じ取ることから始まる。そこで生じた魂の震えこそが枠組みを壊し、いつしか時代を超えた普遍性を獲得していくのだろう。異才が集結して実らせた本作もまたその確たる証だ。

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牛津厚信