劇場公開日 2020年12月4日

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「肖像画を描くこと、他者を知ること」燃ゆる女の肖像 ao-kさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0肖像画を描くこと、他者を知ること

2021年3月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

静かな映画だ。ともすると、眠気を誘われるほどだ。しかし、美しい映画だ。キャンバスに線を描くシーンから始まる本作は、物語の進行と共にその線を太くし、色彩を加え、絵画の如く観る者を引き込む。

肖像画を描くということは、他者を知ることであると同時に、その人物への愛無くして描けない。その者を知れば知るほどに描く筆は進み、白いキャンバスに魂が吹き込まれていく。しかし、それは拭ってしまえば消えてしまう程に儚い。メインとなる女性画家と肖像画のモデルとなる女性との掛け合いは叙事的に描かれるが、使用人の女性のエピソードが加わることで、この時代の身分や性別がどのように扱われてきたかの輪郭が明瞭になる。

束の間の5日間で起こる様々な出来事は、それまで息もできなかった登場人物たちに一時のい安らぎを与えるばかりか、人間らしさを感じさせるシーンとなって機能する。それであるが故に、その5日間が過ぎた後での展開の速さに乾いた哀愁を感じざるを得ない。

肖像画が描き終わることで物語にも結末が訪れると思えたが、その後の展開にこそ本作の真髄が感じられる。冗長とも思えた物語の全てに、すべてのシーンに意味があったと感じさせるまとめ方の巧妙さは言うまでもないが、一枚の絵画に隠されたメッセージとその後の2人の視線の行方は本作の魅力を一層特別なものに昇華させている。

Ao-aO