「圧倒的な傑作!!自分自身よりもいとおしい他者を想い/想われること」燃ゆる女の肖像 ハンキチさんの映画レビュー(感想・評価)
圧倒的な傑作!!自分自身よりもいとおしい他者を想い/想われること
結論から書くと圧倒的な傑作です。
それも、個人的な感想ですが、泣ける、ハラハラするという一次的な尺度では測れない傑作です。
どうでもいい自分語りからはじめます。私は絵を描くことが昔から苦手でした。
美術の授業中に先生から何度となく言われた言葉。「もっとよくみて書け!」
そのたびに、「みてるわい。それでも下手なんじゃ」と思っていました。
この物語にのめりこんでいく脳みその片隅では、そんな記憶が反芻され、そしてはっきり理解しました。私はみるという行為の本質を何も理解していなかった、と。
『みること/みられること』を全編通じて描いた作品ですが、
さらにラスト前とラストシーンで提示されたのは、『自分自身よりもいとおしい他者と出会い、想うこと/想われることが、選ぶことを許されないまま、それでも進んでいく人生をあたためつづけうる』というメッセージと考えます。
解釈の余地を残すラストシーンですが、私はエロイーズもマリアンヌの存在に気付いていると思います。
というか、二人の人生があのラストシーンでふたたび交差したことは幸せな偶然ではなく、
ヴィヴァルディの夏という、互いにとって数少ないながら明確な共通項を演奏する公演である以上、会えるかもと期待して訪れずにはいられなかったと思います。
本当に会えてしまった二人、思わず目で追うマリアンヌ、一方でエロイーズの覚悟、
スクリーンを通じてマリアンヌの視点を得た私が無意識にしていたことは、エロイーズの顔のつくり、うつろう表情をひとつも取りこぼさないようにみるということでした。
ラストシーンがいつまでも終わらなければいいのにと思わずにはいられませんでした。
繰り返します、圧倒的な傑作でした。