「基本は西部劇」バクラウ 地図から消された村 shoheiさんの映画レビュー(感想・評価)
基本は西部劇
非常に面白かった。2019年のカンヌ国際映画祭審査員賞をラ・ジリ監督の「レ・ミゼラブル」と分け合い、グランプリ作品はセネガルを舞台にしたマティ・ディオプ監督の「Atlantique」だったのだが、いずれも白人や金持ちが、有色人種の集団にしっぺ返しを食らうという物語は同じ。グロバリーゼーションが進む世界の中で、抵抗する人たちがいるという寓意が根底にあるのだろう。カンヌではその傾向が喜ばれるということかな。この傾向は、「万引き家族」、「パラサイト~半地下の家族」、「わたしはダニエル・ブレイク」と行った格差社会を描くパルムドールをとった一連の作品群とは少し離れた、もう一つの機軸なんだろうね。三作とも監督の独特の感覚が映画に活きている。この映画もブラジルの辺境にあるバクラウ村の「僻地感」を冒頭で丹念に描いているのがいい。やがて白人市場主義者が村を襲い始めるわけだが、単なる閉鎖的で牧歌的だと思っていた村の人々たちの報復の胆力が素晴らしい。バクラウ歴史博物館が殺戮の場の一つとなるわけなのだけれど、ここで村の歴史が描かれているのがいい。基本は西部劇で、ゴーストタウンに敵が潜むサスペンスが通底している。
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