「これは世界の縮図なのだろうか」バクラウ 地図から消された村 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
これは世界の縮図なのだろうか
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これは非常に奇妙な映画だ。ここが地球上のどこかなのかもよくわからない。そんな場所へ帰郷を果たしたひとりの女性。彼女が延々と続くガタゴト道をトラックに揺られる最中、無知なる私はてっきりこれが、途上国ならではの文化や風習にまつわる物語なのかと思っていた。本作は、そういった端からマウントを取るような先入観や目線をまるっきり逆手にとる。まあ、この村名を示す「バクラウ」という語感からして「どうせこんな展開だろう」という固定観念を断ち切る、ある種の呪文のように思えてくるほどだ。いつしか我々は思い知らされる。どんな集団やコミュニティにもそこに集う理由があり、歴史があることを。そして自己の願望や欲望が剥き出しになった政治や社会状況がこれほどまかり通るこの時代に、本作はその最も混沌としたひずみを見せつけつつ、そこに抗おうとする決死の姿を刻印する。その意味では、世界の縮図が見えてくるかのような映画体験だった。
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