「ウー版『タイタニック』…?」The Crossing ザ・クロッシング Part II 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ウー版『タイタニック』…?
ジョン・ウーの2部作大河ロマン巨編の後編。
おそらく、本当に描きたかったのはこちらだろう。
お陰で前編は、他愛ないメロドラマをダラダラ延々と見せられた訳だが…。
激動の戦乱の中、愛を貫く3組の男女。
やがて各々の運命に導かれるように、大型客船に乗船。
彼らを待ち受けていたのは…。
1949年に起き、1000人以上の死者を出した、“中国のタイタニック”と言われる“太平輪沈没事故”。
(恥ずかしながら、本作で初めて知った…)
本作は平凡な大河メロドラマではなく、ウーはこの悲劇を題材にした中国版『タイタニック』を作りたかったのだ…!(多分)
前編は迫力の戦場シーンのみ見応えあったが、後編もこの沈没シーンこそ不謹慎ではあるが最大のハイライト。
原因である小型船との衝突、傾き海に放り出される乗客たち、そしてあっという間の沈没…。
パニック映画の醍醐味は充分。
でもそれら以上に描かれるのは、人々のエゴ。
元々定員オーバー、積載量オーバーで出港しただけに、惨事は予想以上。
衝突したのに問題ナシと航行を続けようとする船長ら乗組員たち、沈没した小型船の乗組員たちの事はお構いナシ…。
沈没し海に放り出されてからの醜い人間模様…。
これらの地獄絵図だけは本家の『タイタニック』以上と言っていい。
そんな中で描かれる、各々の愛の物語。
2部作からの重みで、悲劇的でありながら美しい愛の物語…と言いたい所だが、平凡でチープな印象なのは、前編からさほど変わってはいない。
特に、前編のエピソードを再度繰り返す序盤は、ある意味これも地獄の堪え忍び…??
まあ確かに前編よりかは後編の方が悪くはなかったとは言え、前後編通して一本の作品として見たとしても…。
あまり言いたくはないが、『マンハント』のレビューで言っちゃってはいるが…、
これがあの『男たちの挽歌』『フェイス/オフ』『レッドクリフ』を撮った名匠の作品か…。
『レッドクリフ』以降の作品の中ではマシな方かもしれないが、その間本作含め3本しか撮っておらず、どんぐりの背比べと言うか、凡作/駄作のマシ争い…。
沈む船に不運にも乗り合わせてしまったウーが、救いの傑作を撮る日はもう…? それともいずれ必ず…?