「「リアリティー」とは?」彼らは生きていた taroさんの映画レビュー(感想・評価)
「リアリティー」とは?
映画が始まると、イギリスの若者が軍隊に入隊し、訓練を受け、戦地に赴く様子がモノクロ映像で映し出されていく。そして、戦闘が始まると映像に鮮やかな色が付き、映っている人びとの声や砲弾の音などが聞こえてくる。おそらく、ここで多くの観客は〝映画のようだ〟と感じたのではないだろうか。最新技術で色や音を復元した映像が〝リアル〟というより〝映画のよう〟に感じてしまうのである。冒頭20分ほどのモノクロ場面が記録映像だとしたら、その後の色と音の着いた戦闘場面は戦争映画のようである。これは、現代の私たちが抱く〝リアルと虚構〟のイメージが、そのような印象を喚起するのだと思われる。
一方で、従軍した人々のインタビューの声が映像にまた別のリアリティーを与えていた。当時の細やかな心境や具体的なディテイルを語る言葉には観ている者を共感させる力があった。リアリティーにとってディテイルと声が重要であることを認識させられた。また、入隊が国家的イベントに参加するような高揚感を与えたこと、戦争に行くことが閉鎖的日常を打ち破って冒険に出るようなロマンがあったこともよく伝わってきた。その後の戦闘場面も、〝映画のような〟映像に従軍した人々の個別具体的な語りが被せられたことで、悲惨な〝現実〟を理解させる力を持ったように感じられた。
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