23:60のレビュー・感想・評価
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多人数同時参加型オンラインRPG
多分、架空のゲームにおけるチャットのログ会話のみで構成される作品。今回の“偏愛ビジュアリスト”の作品群で今作品が一番深く感心した。その世界観といい、ログという一種の字幕スーパーでの会話、しかもそれは打ち込む速さや間違い等に、その人物の感情や印象を投影しているところにアイデアの広がりを感じ取れた。BGMもなにかこの世とは違う異世界に連れて行かれるような感覚、それは題名である59分と0時丁度の間の裂け目に紛れ込んだような錯覚をもたらす素晴らしい演出である。
ストーリーも又、ゾワゾワ感というか、サイコホラー的な要素を存分に影響した内容である。数度だけ会話しただけの女の子が陰惨な事件を起こし自らも死んでしまうが、その前にメールを主人公に送っていた。気になった男がその女の子のプライベートエリアを探索しようとしたとき、別の女の子が現われ、その子と一緒に探索するという流れである。死んだ女の子の心の闇をみつけることができるのか、という方向制かと思うが、しかしそれ程主人公には積極性もないし、単なる興味本位以上を出ないクールさをずっと保った儘。一緒に行動を共にする女の子の何気ない会話の中に乾いたそれでいてお互いにそれ以上踏み込まない距離感が、ネットの世界という虚構で、まるで死者の国を表現しているようで惹き込まれる。プライベートエリアの探索の末、みつけた冷蔵庫の中にはネコ、そして段々と血に染まる様を観たとき、二人は逃げる。勿論、そんなギミックやアイテムはないのだろうから一種のホラーなのだろうが、色々と考えさせる暗喩を秘めながら、6時間に及ぶ散歩は終わり、その吊り橋効果的な雰囲気で二人は再会を約束しログアウトする。結局は死んだ女子の真相は不明の儘だが、その死者と生者の裂け目を旅したような錯覚に陥る実験的アニメーションに心を持って行かれてしまった。この世界観は中々演出出来にくいから、貴重な作品であった。
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