360のレビュー・感想・評価
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メビウスの輪
ウィーン。ビジネスで来ていたマイケル・デーリー(ロウ)は娼婦ブランカを買う予約をしていたのだが、待ち合わせの場所で思わぬ邪魔がはいる。一旦は破談になったセールスマン(モーリッツ・ブライブトロイ)だ。セールスマンはマイケルの去った後、そのブランカを買い楽しんだ後、予約の相手の名前を聞き出し、脅迫じみた電話でマイケルに再交渉させるのだった・・・
パリ。タクシーで赤い帽子の女ヴァレンティーナ(ディナーラ・ドルカーロワ)を追う男(ジャメル・ドゥブース)。既婚女性を追いかけるのはよせとモスクで忠言される・・・
ロンドン。年下の恋人ルイと別れたがっている、女性カメラマンのローズ(ワイズ)。そのルイはローラ(マリア・フロール)という恋人とともにブラジルからやってきた二股男なのだった。そしてマイケルが夫だった・・・
コロラド。刑務所に入っているタイラー(ベン・フォスター)は性犯罪者更生訓練施設へ移る決心をしていた。
ロンドンからの飛行機の中、ローラは失踪中の娘ジュリアの写真を持つジョン(ホプキンス)と同席する。そしてデンバーに着陸。そこでは大雪によって足止めを食ってしまう。レストランで待ち合わせしたのに、タイミングが合わず、今度は一人で空港に来たタイラーと親しくなる。何か起きるかと思っていたら、自制心が働き(トイレで自己処理)、何も起きなかった。
フェニックス。ジョンは遺体確認のため霊安室へ。またしてもジュリアではなかった。その足で断酒会に参加。そこでは新入り、というかゲストのヴァレンティーナがスピーチを始めた・・・
再びパリ。ヴァレンティーナはロシア人の夫セルゲイ(ヴラディミール・ヴドヴィチェンコフ)と半別居生活。セルゲイは銃を運び、殺し屋に娼婦をあてがうという闇の仕事をしていた。一方の彼女は歯科医(ジャメル・ドゥブース)の助手だ。お互い好きなのに、どちらも好きだと切りだせない事情がある。そしてついに告白するかと思いきや、「別の診療所に行ってくれ」・・・
クライマックスは、セルゲイがボスに娼婦ブランカをあてがってから。待ち時間、雨に濡れた彼女の妹アンナ(ガブリエラ・マルチンコワ)を乗せ、ウィーンの街をドライブする。ボスのカバンに大金が入ってたのを目撃したブランカは娼婦の元締めを呼び、金を奪おうと反射的に考えた。セルゲイはボスに応援を頼んだのだが、常々自立したいと考えていたため、殺し屋同士に相討ちさせたのだ・・・見事に2人とも死ぬというご都合主義。ブランカは金を持って逃げ、アンナはセルゲイと当てのない旅を・・・
ストーリーを書くだけで大変な作業なのに、意外とつまらない。タイトルが示すように、360度どこを見ても人間が繋がってるんだなってことくらい。たまたまその人間関係が円のようになってるけど、もっと斬新な関係を見たかったな・・・
煩悩との葛藤
冒頭からネット売春クラブの新人のプロモーション撮影、早く金を稼ぎたい女は急かせるがオーナーはだったら味見をさせろと言う卑しさの権化のような男、思わず引いてしまった。
しかも女は家族に隠すどころか撮影に妹同伴でくるのだからどういう家庭環境なのか気になるがそれらはスル―、こういう所が群像劇の短所なのでしょうか。
ウィーンのホテルでの初仕事の相手が英国のエリートビジネスマン、彼の妻も不倫、その不倫相手にも別の愛人が居て・・・と脈略無く話が流れてゆく、いろいろあって最後は振り出しのウィーンに戻るので環状、タイトルの360なのだろうか。
脚本のピーター・モーガンはアルトゥル・シュニッツラーの戯曲「輪舞」に着想を得たそうですが、「輪舞」は情事の連鎖反応、その余りに乱れた世界観に当局の検閲に合い出版も上演も禁止、解禁後も各方面から上演差し止め訴訟まで起きたいわくつきの戯曲ですから本作も似たり寄ったり。シュニッツラーは物語的な様式から逃れて戯画のような自由な表現形式を模索したとされている。要するに所作やセリフでの人物描写に重きを置き因果関係や物語性にはあまり拘らないと言う作風は本作にも受け継がれているようだがバラエティを盛り込むあまり、売春婦とか犯罪者とか通俗的なアイコンで済まされているようで人物描写としては物足りない。アンソニー・ホプキンスやジュード・ロウと言った名優を揃えたのだが余りにも役不足、勿体ないでしょう。
テーマは誰にでもある煩悩と理性や宗教観などとの葛藤なのだろう、子煩悩な良きパパでも下半身の人格は別、せっかく更生した性犯罪者を誘惑する下りや、イスラム教徒の歯医者が教理と恋愛感情の板挟みで悩む下りなどある種笑える、高尚なテーマを通俗的に描く狙いはわかるが余りにも下世話なエピソードばかりなので閉口しました。
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