ディアマンティーノ 未知との遭遇のレビュー・感想・評価
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Smoke on the pitch
未体験ゾーンの映画たち2019の作品群の中の一作。
なんともまぁ、捉えどころのない奇妙奇天烈な作品である。鑑賞前は“おふざけ”ギャグ映画の類かとたかをくくっていたのだが、内容は至って真面目、しかしあっちこっちテーマが飛んでいて中々一筋縄ではいかない展開であった。しかもそれがポルトガル制作ということならば尚更イメージが浮かび難い。
どう観ても“クリロナ”以外なに者でもない主人公がゴールをゲットする際のイメージが、何匹もの大型トラック程の大きさの室内犬がバラ色の霧の中で戯れていて、その間隙を縫ってシュートを決めるという観たこともないシュールな映像加工をみせつける。この冒頭でギャグ作品だと勘違いしてしまうのだが、多分監督はこれを“オモシロ”で演出しているのではないのだろう。100%真面目に作っているのだろうことは、ストーリーが進んでいく内に分ってくる。サッカーしか知らない主人公を男手一人で育てた優しい父親、弟を金ずると思い利用する双子の姉たち、主人公のマネーロンダリングを疑う当局の諜報機関、そしてEUから出て行きたいポルトガル政治家と、それぞれの思惑が、主人公のピュアな優しさ(悪く言えば世間知らずのお人好し)につけ込む形で利用しようとする。アフリカ難民の里親になりたい主人公に諜報機関が難民を装い、まんまと家族に成りすますのだが、しかし男の子を装う実は女、しかもビアン。主人公も姉たちに騙され、右翼系政治家が主導する計画の副作用で女性の乳房へと胸が変形していく。
自分でも粗筋を書いていて何が何だかサッパリ解らない構成である。まぁ、結局おっぱいができた主人公と、ビアンの諜報員がその疑似親子から、恋愛関係に変化していくという、“メタモルフォーゼ”がテーマなのかもしれない、一連の突飛な発想の連続なのである。決して茶化すことなく真剣に作っているところも又、馬鹿馬鹿しくしかしシュールでシニカルである。これ位、ハチャメチャで社会風刺のスパイスも捻りを加えず盛り込んだ、ケレン味溢れる作品なのではないかと思った次第だ。
但し、あくまでも“ゲテモノ”には変わりはないw
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