「nestからnext」HELLO WORLD いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
nestからnext
入れ籠構造のストーリーからその先の展開を探す、物語構築の新しい試みというテーマが本作らしい。というのも、他のレビュアーの方の感想を拝読しても、全体像を掴めないモヤモヤ感が印象として持ってしまい、ネット上でその解釈を探している内に、それらしき内容を読んでの自分なりの印象である。その新しい試みを体現する上で“恋愛”という普遍性を手段として用いたような穿った見方さえ感じられた。哲学的に言えば『ポストモダン』のその先にあるものの一つの提示を表現してるということ・・・らしいのだが、それがこの作品のややこしさを加速させているのではないかと感じたりする。勿論、その解釈自体は自分は全面的に賛同するし、高度な言及に目から鱗が落ちた思いも抱いた。しかしこれをターゲット層である中高生がどれだけ理解できるかと思うと、そんな概念を引っ張り出して悦に浸るのは野暮であろう。ここは純粋に、ウブな男子高校生が好きになった女の子の危機を守るその壮大な闘いが世界をも巻き込む、所謂“セカイ系”のジャンルとしての作品の一つとして落ち着かせるのが穏当に思われる。その肉付けや演出の為に、過去の色々な媒体のSF作品をヒップホップの如くサンプリング手法を用い、既視感の中でより親密性とドラマティック性を表現させた作りになっている。話題のラストは、まぁ“オマケ”みたいなもので、どんでん返しみたいな展開にストーリーとしての厚みを演出したに過ぎないと思う。そもそもストーリー上の齟齬をアナザーストーリーとして小説化している点も含めて、メディアミックスとしての商業ベースを勘案しての作品なのだろうから、目くじら立てる側が馬鹿を見るような構図になる現在社会に於いては、わざわざ罠に落ちずに良い意味で“諦観”する鑑賞を心掛けるのも一つの見方なのではないだろうか。凄いとも思えなかったし、だからといって駄作でもないし、しかし、少々“マネタイズ”が鼻につくって位かと・・・w