「もったいない」名探偵コナン 紺青の拳(フィスト) さなさんの映画レビュー(感想・評価)
もったいない
劇場版名探偵コナンは基本的にこだま監督の作品(特に瞳の中の暗殺者)が好きだが、去年のゼロの執行人が久しぶりにかなり面白かった+京極さん初映画出演ということで今回はかなり楽しみにしていた。
設定からして壮大な事件を期待していたが、展開も簡単に予想がつくし、テンポがはやいラブコメ+アクション映画という感じだった。
上映中は飽きずに観れたし決してつまらなかったわけではないが、また観に行きたいとは思わなかった。
良い点も悪い点もあったが、悪い点の方が目立ったため、★2とした。
◎良かった点
★作画が良い。
背景も綺麗だが、人物の作画は去年とは段違い。歴代コナン映画の中でもトップクラスに良い。女の子、特に園子がとてもかわいく描かれている所が良かった。園子はヘアバンドを取るべき。
★話がぽんぽん進むので飽きない。
◎悪かった点
★詰め込みすぎたせいかシナリオも各キャラの描き方も中途半端で何を描きたかったのかがわからない。
★各キャラの使い方にいまいち納得できない。
・コナン
京極さんによりピンチに陥ってしまったキッドを助ける場面があった。コナンとキッドは基本的に敵対関係であり、事情が事情であっても犯罪行為に加担するとは思えない。しかも大会を控える京極さん相手にあの殺人ボールを蹴るという。また、最後にコナンは犯人にいつもの名乗りをするが、ぼろぼろの犯人を前にああいう風に平然と名乗らせるのは、江戸川コナンの設定的にどうなんだろうか。
・キッド
あっさり銃に撃たれて負傷する。また、クライマックスの方で、自身を狙っていた犯人の仲間を宙吊りにするのもちょっと違う気がする。あの場面、あの位置でそんな風に吊るしてたら普通に死ぬでしょうが、と思ってしまった。まじ快ならギャグ調で許されてもコナン映画であの行動は似つかわしくないんじゃないだろうか。
・京極さん
謎のメンタルの弱さ。ミサンガにしても、京極さん自身で戦う理由を見出だしてミサンガを切るならまだしも、結局外部からの力、キッドが切ることで戦いを始めてしまう。戦う理由云々のくだりは何だったのか。京極さんを決勝戦に出させず、あっさり無双させないための苦肉の策としか思えない。あと最後の戦闘描写はやりすぎ感があった。どう見ても別のアニメ。
・蘭
蘭姉ちゃんはあんなに演技派策士だっただろうか……。付き合うようになって余裕が出てきたということなのかもしれないがちょっと不思議な感じがした。
・おっちゃん
おっちゃんはヘボ探偵でだらしなくはあるけどめちゃくちゃ娘思いのお父さんなはず。そんなおっちゃんのせいでああいう風に蘭が危険に陥るのはどうかと思う。14番目の標的や水平線上の陰謀が恋しくなった。
・少年探偵団
入れる場所がなくて無理矢理入れた感じ。出すならもっとちゃんと描いてほしい。一応テレビ放送の方でフォローはあったが。
★BGMが薄い。
去年や一昨年はメインテーマのアレンジもよく、BGMが各場面を盛り上げていたが、今回は印象に残る曲がなかった。
★一部青山先生原画カットがED後にくるという詰めこみぶり。今回は蘭&コナンの見せ場がなく、ついで感があった。
総合すると、作画は良いが、シナリオはあまりよくない、もったいない映画だった。
キッドと京極さん、どちらも出すのであれば、二人の対決を主軸に置けば良かったのではないかと思う。
あれもこれも見せようと詰め込みすぎた結果、場面の切り替わりも相当早く、各キャラの特性も活かせず何とか尺におさめた感が強かったので、何かの要素を削って余裕を持たせればもっと良い映画に出来たんじゃないかと思った。