「ファンタジーになりきれない虚構世界」クローゼットに閉じこめられた僕の奇想天外な旅 しずるさんの映画レビュー(感想・評価)
ファンタジーになりきれない虚構世界
タイトル長っ!(笑)
インド人青年が、旅先フランスの家具店でクローゼットに隠れて眠っている内に、家具ごと海外に輸送され、様々な出来事に巻き込まれながら国々を点々とするという、まさに奇想天外な筋書き。
なのだが、思っていたほどはっちゃけた内容でもなく、現実と虚構のバランスが、ちょっと中途半端な感触。
人生は自分で切り開くのよ、と、母の教訓を持ち出す割には、主人公の行動原理は一貫性がなく、大方成り行きで流されている感じだし、目の醒めるような驚き展開や爽快感は余りない。
ただひたすら、主人公の明るく憎めない愛嬌に全てが救われている感じ。
どうせ成り行きなら、徹底して運や偶然だけで昔話のように人生大逆転とか、ホントに世界中巡りまくるとか、もちょっと吹っ切れてくれてれば、面白く見られたかも。
難民問題など、世界情勢もさりげなく盛り込まれているが、突っ込んで描かれていないので、感じ入る所なく薄い印象のまま終わってしまった。
運命の出会いをした恋人のスタンスも不可解。
主人公に再会の約束をすっぽかされて、他の完璧な男性と偶然の出会い、幸せな恋人生活…の果てに、何故全て放り出してインドまで主人公を追ってきたのか???
まあ、どこまでが真実か解らない、主人公が語る『物語』なので、ほとんど妄想って可能性もあるが(笑)
主人公は多分、手品を見せるのと同様に、『物語』で人々を喜ばせ、夢を与える事に、自分の人生の喜びを見出だしたという事なんだろうなぁ。
世界は広くて、思いもよらない出会いやチャンスがあるんだよ、と。
数は多くないが、歌やダンスのシーンは華やかで楽しい。
家具店、パリやイタリアの街並みなど、ビジュアルもお洒落。
重い気分にさせられる展開も殆んどないし、後味は悪くない。
上映時間も100分ほどと短いので、今日は仕事帰りに外国料理食べに行って海外気分に浸るわー、程度の、カジュアルな感覚で楽しむといいかも。