「青春時代の少年の美しさが詰まった作品でした。」映画 少年たち かんだーらさんの映画レビュー(感想・評価)
青春時代の少年の美しさが詰まった作品でした。
私自身、映画を観ることが少なく、比較できる経験がないので無知であることはご了承いただきたいです。また、私はもともとジャニーズJr.のファンであるので、作品自体に興味がありジャニーズJr.を知らない方とは認識のズレがあると思いますが出来る限り客観的な評価をしたいと思います。
まず、映画少年たちを見た率直な感想は「濃い」です。作品自体のテンポはとても良く時間が早くすぎたように感じました。退屈を感じることは全くありません。しかし逆に内容を盛り込みすぎたようにも感じました。
基本はミュージカルで冒頭に長尺の歌とダンスがあります。挿入歌も多いです。ジャニーズJr.が演じているので歌とダンスのクオリティはとても高いです。特にジョー役のジェシーさんはとても繊細な歌声で彼の歌を初めて聴く方は少々驚くかもしれません。
しかしいくつかの挿入歌が唐突に始まったと感じました。ほとんどは物語から滑らかに音楽に入っていくのですが、「あれ?」と思うところが何度かありました。
ただ、ミュージカルとしての演出の幅が広いです。一人がアカペラで歌うシーンもあれば大人数で煌びやかに魅せるところもあるので音楽としての芸術性は高いと思います。先述した通り、ジャニーズJr.が演じているので歌とダンスとアクロバットのクオリティが本当に高いのでそういうものが好きな方は楽しめると思います。
そして物語の内容ですが、少年刑務所を舞台にしているということからそれぞれのキャラクターの背景が重いです。確かに罪を犯したのは彼らなのですが、その背景のどうしようもない理由を考えるとやりきれない気持ちになります。そして暴力シーンがただの喧嘩ではなく妙にリアルな静かさを持っていて恐怖を感じます。彼らそれぞれが思春期における葛藤の末の狂気的な暴力によって収監されていてとても苦しくなりました。派手に血がでて悲鳴をあげるというものではなく、息がつまる辛さがあります。
演技は最初に多少の違和感がありましたが、途中から気にならなくなりました。セリフで表現するより音楽で表現する方が彼らに合っているのか、何度か挿入歌を挟むとだんだん演技に違和感がなくなりました。しかし演技力に関しては私が演じていない時の彼らを知っているので、彼ら自身に対する先入観により違和感を感じているのかもしれません。なので初めて見る方が違和感を感じるかどうかわかりません。
映画のストーリーはとても面白く考えさせられるものがありました。
それぞれの苦しさは本人にしかわからない、だけどそうやって分かり合えないと割り切るわけじゃない。自分の苦しさを内に秘めたままぶつかり合う思春期の少年たちの美しさ。独立した個人である少年それぞれが認め合い助け合う、まさに「少年たち」という言葉に尽きるなと思いました。全ての少年が根っからの悪ではなく環境がそうさせた切なさ、そしてその中でもがき苦しむ美しさがよく表現されていました。
しかしストーリーの濃淡が激しかったようにも感じます。あるキャラクターは回想シーンがしっかりあるのに、あるキャラクターはなんの罪で入所したのかすらわからないのは少しモヤモヤしました。そして起承転結の起、承でキャラクターたちの辛さを見せておきながら、転の部分が雑に感じました。前半にそれぞれのキャラクターにスポットを当てて物語を作ってきたのに後半に転がり落ちるように物語が展開していき少々面食らいました。それぞれの1つ1つは作り込まれてるけど継ぎ目は少々テキトー、という感じがしなくもなかったです。
しかし内容自体は薄くないので観る度により理解が深まる作品なのだと思いました。
私としてはとても面白くまた何度か見に行く予定です。青春時代の少年たちに美しさを感じる方は絶対に見た方がいいと思います。少年性の表現に関してジャニーズの右に出るものはないと思います。
ただ内容が苦しく辛いのでこの少年たちを作品として何も知らない友人に進めるかどうかは迷います。ミュージカル部分もとても楽しく、内容も詰まっているのですが、心の弱い方だとトラウマになってしまいそうな、思わず手で顔を覆いたくなったシーンもあります。
しかし、このような痛ましい演出もまた、この作品の魅力ではあると思います。
このレビューには称賛も批判も書いていますが作品全体を考えると最高の作品でした。
私としては辛い部分があったので「迷ったら観てみて!」とゴリ押しすることはできませんが、是非興味を持った方は観てみてください!
ただ観に行こうと思われている方は是非公式サイトを見るなりパンフレットを購入するなりして、キャラクターを認識してから観てください。冒頭の音楽のシーンで、演者とともにキャラクター名ではなくなぜか演者本人の名前が出てきて混乱すると思います。そこに関してはどういう意図での演出なのかと疑問が残ります。さらに、キャラクターの名前が少年刑務所という特殊な環境からあだ名の部分が多く何も知らずに観ると本当に混乱してしまうと思います。