「江戸川乱歩それともフェミニズム」歯まん いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
江戸川乱歩それともフェミニズム
表題は上映後の監督の登壇にて海外の映画祭で質問されたテーマということなのだが、本人は『コンプレックスを抱いてる人間がどうやって乗り越えられるか』というのがそもそものプロットらしい。
制作年が2015年ということだから四年前の作品である。作品内容には関係無いが。
コンセプトとしての『性器切断』モノは古今東西枚挙に暇が無く、その中でも女性器による切断モノでもいわゆるエロ漫画のホラージャンルとしては擦られ過ぎている題材だ。それだけに実写化的要素として監督がどれだけこのジャンルを自分のモノにして観客に伝えられることが出来るかが重要である。
ストーリーの組立て方は少々乱暴だがまぁ、物語だから仕方がないかとも思うのだが、サスペンス要素と、ミスリード要素も組み込まれていて概ねそこは面白いのに、ブリッジが強引というか道理が引っ込んでしまっている感覚だ。一番今作品で褒めたいのは、何と言っても主人公の女優の発声が良い。口ごもってないので台詞がキチンと聞き取れるのが助かる。ここ最近の映画はそういう所に欠けているからだ。同じように、今作品でもそうだが、書き置き等の紙に書いてある字はどの作品でも見えづらい。ボールペン等で書かれているのでその内容がもしかしてストーリー上の伏線になっている可能性を考えてしまうと本当に残念である。せめてテロップ等で出して貰えないだろうか・・・
本題に戻すが、主人公がサキュバスや雌カマキリと化すのか、それともその境遇に自ら悩み苦しむのか、一応後者からの前者への変貌ということでの理解なのだが、それだとラストの警察官からの逃避と、雌カマキリのカットバックは綺麗に繋がっているとは言い難い。演出としても、もっとその変貌を強調した方が際立つかと思うのだが。姉だと思っていたら確かに兄弟でのシーンが無かったからこれはしてやられたと唸る部分もあるが、ではあの女はストーカーだったのか、あれだけ背中刺されても穴を掘る力があるのかとか、そもそも精機を切られて位では人は死なない等のリアリティ欠乏を何とか埋める理論性が欲しかったと思うのは、それだけテーマとプロットが面白かったからである。
冒頭とラストの騎乗位での恍惚な表情は大変そそられたので、今後楽しみな女優さんである。