劇場公開日 2018年7月28日

「【”人生は成功と失敗だけじゃない。一度しかない人生、夢を諦めない。”エスプリの効いたフレンチヒューマンコメディ。】」ムッシュ・アンリと私の秘密 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5【”人生は成功と失敗だけじゃない。一度しかない人生、夢を諦めない。”エスプリの効いたフレンチヒューマンコメディ。】

2024年11月23日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

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幸せ

■偏屈で口が悪い老人・アンリ(クロード・ブラッスール)は息子ポール(ギヨーム・ドゥ・トンケデック)の結婚相手ヴァレリーが何故か気に入らない。
 そこで彼は、息子の結婚を破綻させることを条件に、自分が所有するアパルトメントの空き部屋を無料で貸し出すという事を考え出す。
 オルレアンから来たお金に困っている苦学生のコンスタンス(ノエミ・シュミット)は、その部屋を借りることになり、息子のポールを誘惑しようとする。

◆感想

・アンリの口の悪さや、一見ひねくれたモノの見方が徐々に愛妻を亡くした事による寂しさと後悔が、鬱積したのではないかな、と思いながら鑑賞する。
 何故なら、コンスタンスが留年が決まり、酒を飲み過ぎた時に口にした”妻は、窓から転落した時にアルコールが入っていた・・。”と呟くからである。
 余り、奥さんに表面上は愛情を出さなかったのではないかな、とふと思ったシーンである。

・一方、コンスタンスも父親の言葉には逆らえずに、留年を繰り返す冴えない日々。だが、ある日アンリから禁じられていた亡き妻のピアノを奏でてしまう。
 その音色を聴いたアンリは、亡き妻を思い出しその場を去るが、コンスタンスのピアノの才能に気付いたのか、ロンドンの音楽学校のチラシを自分の家のポストに入れ、わざわざコンスタンスに取りに行かせる姿などを観ていると、実は心優しき男ではないかなと思う。

・コンスタンスもポールを誘惑しようとするが、良心の呵責がありそれを辞める。そんな時にポールとヴァレリーに待望の子供が出来、アンリも表面上は渋々と、けれども内心は可なり喜んでいる。

■コンスタンスが、ロンドンの音楽学校に行きたいと父親に言うも、案の定反対されるが、彼女はアンリの言葉”一度しかない人生、夢を諦めない。”を思い出し、初めて父に反抗し、父も娘の頑固さを認め、引き下がるのである。

・そして、コンスタンスはロンドンの音楽学校の試験を受ける。その間にアンリは亡くなる。コンスタンスは最終選考で落ちてしまったのだが、アンリには合格したと伝えていた。

<そして、コンスタンスがアンリのアパルトメントに戻ると、ポールが片付けをしている。そして、コンスタンスに”ここは、学生たちに貸し出すよ。君も居ていいよ。”と言いながら、亡き父から預かった手紙を彼女に差し出すのである。
 その手紙には、彼女の不合格であった事を見抜いたかのような、”人生は成功と失敗だけじゃない。風邪を引くなよ。”と記されていたのである。
 今作は、エスプリの効いたフレンチヒューマンコメディだと思います。>

NOBU