「冒頭5分で笑えなければ観ない方がいい」天使たちのビッチ・ナイト つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
冒頭5分で笑えなければ観ない方がいい
これは面白かったね。下品でおバカ気味な作品ではあるけれど、想像以上に知的で緻密な作品でもあった。
まず、冒頭に、農作業中の雑用係に話しかけられ、いきなり罵声を浴びせるシーンがあるが、ここで爆笑しなかったならもう視聴はやめていい。どうせその後も意味が分からず面白くないだろうから時間を無駄にするな。
簡単にいうと、終盤でそれぞれの罪を司教に読み上げられるが、その罪の数だけ笑えるということになるはず。
だけどキリスト教とか全くわからんという人には面白くなくても仕方ない。罪を犯した瞬間がわからないなら笑えるはずもない。
予告編でキリスト教徒は不快になる恐れがあります的な文言が出るが、キリスト教徒くらいじゃないと逆に面白くない気もする。私は無神論者だが。
舞台は1347年夏頃のイタリア。ペストが大流行する直前である。
デカメロンがペストから逃れた若者たちの小話で、本作がデカメロンの一部がベースになっているから、この時代設定ではあるのだろうが、ペストの前と後で変わったもの変わらなかったものを表そうとしているような気もする。
ペストの流行により一般人も聖職者も等しく死亡し(当たり前だけどね)祈りの無意味さ、教義の無意味さが露呈し教会はガッタガタになる。
すると快楽主義が横行し、つまり本作で描かれていているような状態になるわけ。
作品内では修道院の人たちは悪で司教は正義のように描かれているけど、数年後にはひっくり返る。
お前らいくら祈ってもペストで死ぬんだぜ、それより神父とマリヤのような愛を育んだ方がいいんじゃないか?と皮肉っているんだな。
少なくとも私にはとても良いカップルに見えたよ。ただ神父とシスターと言うだけで何が悪いのか。何が罪だというのだ。罪人も司教もどうせ等しくペストで死ぬのにさ。
作品内では描かれるシスターたちの騒動は時代に即した内容だけど、酒を飲んでドラッグやって、男を漁りハチャメチャやって、ヘイトクライムを連発するのは、今の時代と何も変わってないよね。この人類の成長のなさが笑える。
そしてエンディングでは、修道女と魔女とゲイのユダヤ人が和解する、現代的で奇跡的な着地をみせる。
中世の物語でありながら現代まで続いている地続き感が巧妙で、よく出来た作品だなと感心してしまうのだ。