冷たい晩餐のレビュー・感想・評価
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まともな人間はいないのか・・・
食前酒、前菜、メイン、チーズコース、デザート、食後酒という一風変わった章立てストーリー。スタンとポールの兄弟、それぞれの妻の4人が高級レストランでプライベート・ディナーを楽しんでいるようではあるが、議員であるスタンは審議中の法案が可決するかどうかを気にしながら、ポールは心の病によって精神的不安に陥っている。スタンはリックという前妻の子と黒人の養子ボーという息子がいて、元教師のポールにはマイケルという一人息子がいる。
最終的にはこのまま息子たちの罪を認めるべきかどうかを議論する場となったが、政治家生命を辞してでも自首をすすめようとするスタン以外は皆息子たちを庇おうとする。自首しないでいても、ずっと心にしこりを残し、名もないホームレスの被害者の十字架を背負って生きなければならないのだ。一般論的にも、罪を認めて更生した方が精神的にも楽だと思うのだが・・・
結果、マイケルとリックの犯罪をボーがネット上に動画をアップしたことが彼らをまた悩ませ、ポールはボーに夜襲をかけて不明瞭なまま結末を迎える。後味の悪さと、自分が一番可愛いんだというアメリカ人の本質にまで食い込もうとしているのだが、作品の構成とか、つまらない部分が多くなっているのが難点。回想シーンはATM放火現場だけでよろしいかと・・・。また、晩餐というタイトルの割に食欲がわくような映像は一切ない(笑)。
タイトルなし(ネタバレ)
高校の歴史教師ポールは妻クレアに説得されて政治家の兄スタン夫妻との有名レストランのディナーに渋々出かける。案の定話題も噛み合わず最悪の空気になるテーブル。何度も中座するポールを優しく諭すクレア。彼らにはどうしても話し合わなければならない共通の問題があるのだった。
テーブルを囲む4人と彼らの子供達との関係がランダムに時制が前後するフラッシュバックで暗示され、4人がようやく話題の核心に触れ始めてからガラリと物語のトーンが変わって観客が意外性に戸惑っているところに訪れる不完全な終幕。直接的には全く語られない登場人物達が抱える闇にはただならぬリアリティがあって、無難に器用に立ち振る舞って生きているつもりの自分もいつその闇に飲み込まれるか判らない、そんな心情をグラグラと揺さぶってくる不穏なテンポが意外と心地良かったです。夥しいサントラも全く耳に響かないくらい不快な映画でしたが嫌いではないです。
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